懇神会 その11
懇神会 その11
神々に見せる余興──それは彼らが英霊たちに差し向けた英勇殺し[クノッソス]と戦うことだった。
脆弱なこの身は負け続きだが、追い詰められてからが本番。
ある夫婦の『プログレス』と権能、それらの力で挑むことに。
「来い──『 侵略者 バシビウス 』」
名前を呼ぶと共に、権能が発動。
かつて俺が討伐した『侵略者』と呼ばれる種族の力を、体現可能となった。
そしてそれは、【獣王】の『プログレス:ビーストオーブ』によって更に変化。
本来の権能では対象に含まれない、非動物種族の能力がオーブに宿り──
「──“ブーステッド・オーブ”」
オーブの輝きが増す。
ただしそれは、黒く禍々しい。
見た者が嫌悪感すら覚えるそれを、俺は迷わず体に押し込んだ。
「“ブーステッド・オーブ”、効果は宿した性質の増幅強化……さすが、武闘派ですね」
新たに目覚めさせたらしいこの能力。
元より発現していた他者への譲渡能力を強くするのではなく、自分で使うための能力を新たに作る辺りが戦闘狂である。
まあ、結果的にこの状況になるわけだが。
俺から込み上げる黒い輝き……強化されることで、彼らは自らを生かすために必要な黒い霧に似たナニカを作れるようになるのか。
「真っ当に挑んで勝てる道理はありませんからね。嵌め技、裏技、チート……好きなようにどうぞ」
『──ッ!!』
俺が何をしているのか分かったのだろう。
咆哮を上げると共に、掴み上げた俺を床に叩きつけて何度も斧を振り下ろす。
しかし、『生者』はそんな俺を何度でもその場に蘇らせる。
死と共に振り撒かれる黒い粒子──それらは迷宮に付着し、妖しく輝いていく。
「なるほど……そういうことでしたか」
『────』
「『冥宮』、それは英勇を殺す場所であると同時に、貴方自身という意味でもあったのですね。文字通り、一心同体として」
ミノタウロスは神話において、迷宮に閉じ込められた怪物である。
しかしこの世界において、[クノッソス]の名を与えられた彼はそれを超越した。
話には聞いていたが、どうやら俺が思っていた以上に一体化のレベルが高い。
迷宮と[クノッソス]は同じ、つまり目の前の[クノッソス]は本体では無いのだ。
「そういえば、迷宮核が妖刀という場所がありました。ある意味、彼の迷宮は貴方と同じ存在なのかもしれませんね──っと、無駄話はお嫌いでしたか」
『──ッ!!』
「それでしたら、私がすべきことも簡単──神々の目を楽しませるためにも、どうかお付き合いください」
黒い輝きが更に強まる。
俺をどうにかしようとしていた[クノッソス]だが、それを止めて頭を抱えてしまう。
侵略者はその名の通り、己以外の存在を侵略することを得意とする。
本来であれば生物に限定した能力、だがこの迷宮は[クノッソス]でもあった。
そう、無機物でもあり有機物でもある。
ゆえに効果は発動し──侵略が始まりつつあった。