第一回プレオープン その09
第一回プレオープン その09
たとえ『超越者』を辞めようとも、そこに至るだけの実力が凄かった旧『錬金王』。
辞めるまでの過程もいろいろと凄いからこそ、ある意味当時以上の力を得ている。
「──『生者』、少し良いだろうか」
「『学者』さん……いかがでしたか?」
今は、『騎士王』が現『錬金王』であるユリルと戦っている。
……差は圧倒的なのだが、涙目で食らいついているのが何ともいない。
さて、そんな試合に若干の憐れみを覚えていた俺に話しかけてきた『学者』。
呼び出すまでは図書館で本を読んでいた彼だが……どうやら、何かあるようだ。
「読める範囲はすべて読ませてもらった」
「…………かなりの量が、あったと思うのですが? ああ、もしや『学者』にはそのような権能があるのですか?」
「いや? そういったものは無い。並列思考は素で可能だ。それをスキルで増やし、目を通しているだけだ」
「な、なるほど……」
要するに、本来は一を二や三にできるスキルで四や九にしているらしい。
ジンリ辺りなら、同じことができるんだろうな……うん、俺もやってみたいが無理だ。
タクマから聞いた話だと、技術系のスキルは頑張れば素でやれるようになるとのこと。
俺の場合、職業スキルになるだが……暇なときに、せっかくだから試してみようか。
「いくつか気になる内容があった。前提を確認するが、内容に嘘偽りは無いな」
「ジャンルにもよりますが、少なくとも論文や技術などに関しては」
「ならばいい。その論文──『星核のもたらす恩恵、認定される人と魔』についてだ」
「……ああ、アレですか」
それはある意味、『超越者』の『学者』には興味深く見えたのかもしれない。
この星で割と冒涜的な研究を行い、その果てに得た情報を記載した論文である。
かなり読みづらく、仕掛けをいくつか施してあったのだが……無意味だったようだ。
やはり解析能力も長けていた『学者』、彼は俺に問いかける。
「アレの内容が真実だとして、それを広めるつもりはあるのか?」
「どちらとも言えませんね……ただ、本とは記し未来へ託す方舟。私が口を閉ざした時、伝えられなくなった知識をこの世界に置いてあるだけですよ」
「口封じか……お前の権能を考えれば、もっとも難しいだろうに」
「ですが、絶対ではありません。また、私が休人である以上、こちらの世界へ来られなくなる場合も想定しています」
EHOでは何度でも蘇生されるが、現実ではそうとは限らない。
そうなれば、[ログイン]が行われなくなり『ツクル』が動くことは無くなる。
「『騎士王』さんがあそこに居るタイミングで尋ねたということは、もしや?」
「ああ、貴重な情報を得られた。ただ、アレではセキュリティの観点で少々疑問を感じたからな」
「なるほど、では『学者』さんはどのようにするのが良いと?」
「良い質問だ。たとえば──」
と、男二人。
こそこそと本の上手な隠し方について語り合うのだった。