密入準備 中篇
密入準備 中篇
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結界の強化を図るため、『騎士王』に相談したところ勧められたのは魔導世界。
当然、いろいろとやらかしている俺に正式な手段での渡航は難しい。
それをどうにかしてくれるらしい、そんなわけである場所へ転移してもらったが──見覚えのある場所だった。
「ここは……」
「待っておったぞ、『生者』よ。この愚者を待たせるとは、魔導世界であれば死に値する行いだったぞ」
「申し訳ありません。些か状況を理解していなくて……」
「──魔導世界に行きたい、じゃろう? すでに『騎士王』より話は伝わっておる、儂はその協力者じゃ」
チラリと『騎士王』の方を見てみるが……うわっ、どや顔をしているよ。
聞いている、ではなく伝わっているな辺り便利な魔術でもあるのかもしれない。
ともあれ、『愚かな賢者』である見た目幼女ならば納得だ。
なんせ彼(女)は、すでに一度冒険世界に密入国ならぬ密入界を果たしているからな。
「じゃが、分かっておるな? 魔の者に無償の貢献など無い。武の者は任侠だの義などと 宣 のたま っておるが、魔において重要なのは対価。それを欠くして、理も利も得られぬわ」
「もちろんです。ですが、今回は未知の魔導世界。上手い条件が思いつきません」
「…………ならば」
「──ならば、こうしましょう。一定時間経過後、おそらく私に差し向けられるであろう刺客。その者が私に向けた術式、それを解析して『愚かな賢者』様にお渡しする、というのは?」
対価を提供できない俺が渡すのは、今は意味を成さない空手形。
口約束以下のその言葉だが……それでも、そこに価値を生み出すのが俺の役目だ。
「ふむ、魅力的な提案じゃな。儂とて、他の連中の術式を得るのは難しい。見せ物用の簡単な術式やすでに無意味な過去のモノならばともかく、今使っている本命はの。それこそ星に命じられ、本気を使うとき以外はな」
「ええ。実際、私は生産世界にて彼の世界の強者『星宝級職人』より、星の命にてと告げられ仕掛けられました。冒険世界でも、武の世界より『極逸』が。おそらく、今回も同じような結果になるでしょう」
「……その可能性は高い。お主の未知を、手に負えぬ『生者』の権能を無力化するのであれば、我が魔導世界こそが長けておろう。であれば、襲われること自体は起きるべくして起きる。それで、どのようにするのじゃ?」
目を爛々と輝かせる『愚かな賢者』。
俺の提案はあくまでも、襲われた後に得られる術式の提供だ──彼(女)でも手に入れられない物を、どう得るのか知りたいのだ。