魔導世界密入 その01
魔導世界密入 その01
魔導世界 ???
事前の注意を『愚かな賢者』から受け、ついに俺は魔導世界へ。
冒険世界から『騎士王』の亜空、『愚かな賢者』の亜空と来て──ついに。
「ここが……魔導世界」
「うむ、儂も良く使う闇市の一つじゃ。連中も時折手の者を差し向けてくるが、お互いに見て見ぬふりをしておるよ。連中の我の強い領域よりも、こちらの方が良いじゃろう」
「……ええ、とても興味深いです」
闇市と語る『愚かな賢者』だが、そこは暗躍街のような地下世界では無かった。
彼(女)が事前に語った通り、そこは魔導世界の狭間──亜空なのだろう。
亜空に地下である制限など無い、近いもので言えば迷宮──世界とは異なる異空間。
上には空が、下には地面が、横には並び立つ家々が。
創作物でよくある黒さを感じさせない光景には、若干の驚きを隠し得ない。
……まあ、人々が持ち歩く品の中には、いろいろとアレなモノも混ざっているのだが。
「──では、儂の案内はここまでじゃ」
「…………えっと」
「言いたいことは分かるが、これ以上は居ても仕方なかろう。対価さえあれば、魔導世界の民は大抵のことはやってのけるよ。では、例のモノを期待して待っておるぞ」
「…………えぇー」
俺は道の真ん中に放置され、自分自身は転移の術式でここから去る『愚かな賢者』。
残された俺は茫然……としている暇も無いので、すぐに隠蔽作業に入る。
《ホログラムによる転移術式の投影、同時に『プログレス:インビジブルクローク』による隠蔽を実行します》
「頼む──“ 孤絶ノ衣 ウツロナルマトイ ”っと」
俺と『SEBAS』は異なる手段で、この場の者たちから俺の姿を隠す。
この場の者たちは主に魔道士──魔法や魔術を扱う彼らを騙す術をいくつも使う。
大半の者はホログラムで勝手に転移をしたと判断、それを看破できた者でもそれができるからこそ高度な魔道士だと思い込み、それ以上の深追いはしてこない。
実際には『極小○』ぐらいしか使えない脆弱な生産士なのだが、それでも道の端に移動してそのまま路地裏へ……そこでようやく、一息吐いた。
「ふぅ……『SEBAS』、俺に気付いているような動きをしている奴は居るか?」
《ドローンを展開し、確認します……現状では、まだ居りません。次いで、情報収集を開始します》
「頼んだぞ。さて、ここからだ。刺客を差し向けられるのは時間の問題。それまでに、できることはやっていこう」
バレることが前提のことは、後回し。
目的である理による術式改善も、さっそく試してみないとな。