魔導世界密入 その19
魔導世界密入 その19
魔力を遮断したことで、とりあえず刺客の干渉そのものは阻めるようになった。
ただし、監視は続いているので警戒を怠ることは無い。
「さて、神殿に着いたわけだが……考えてみれば、ある意味当然なのかな?」
遠目に見えた神殿は、近くで見るとかなり損傷個所が多かった。
人もそこまで通っておらず、むしろ遠巻きに避けるような動きをしている。
「ここに居るのって、そもそも業を持っているヤツだけだし。あと、魔導士って魔力で神秘をやっている以上、そこまで信仰深くは無いって話だよな」
《魔術にも種類はございます。『八大星魔』の内一人は、神子──神の子と呼ばれるほどの存在なので、神自体は信じているのでしょう……ですが、あくまでそれは研究材料の一つとして、となります》
「超越した存在であるからこそ、か……居たら居るで人の飽くなき探求心の恰好の的になるわけだ。じゃあ、なんでここには人が居ないんだ?」
《おそらく、噛み合わなかったのでしょう。信仰に基づく術式の大半が、神への信仰心を絶対の媒介とします。悪徳を働いた理由はどうあれ、そこに神への期待というものは無いに等しいでしょう》
要するに、神様に助けてもらう必要は無いと考えているわけだな。
そもそも魔導士って神様より術式の方を信じているだろうし、相性が悪いのだ。
なんてことを考えながら、神殿に入る。
神殿には本来、神秘性の影響であらゆる欺瞞を見破る力がある──しかし、信仰心が足りないとその力は発揮されない。
「……よし、『プログレス』の方が出力は上だな。庇護が強化されててよかった」
懇神会を経て、女神プログレスの恩恵である庇護が成長していた。
その効果によって、権能や神の御業に対する耐性が若干強くなっている。
要するに、『プログレス』に対する信仰心が強ければ強いほど、神様が相手であろうと『プログレス』が使えるようになるのだ。
「そういえば、冒険世界はギリシア神話と北欧神話っぽい感じだったけど、生産世界は神様関係のことは分からなかったな……そしてここ、いったいどこの神話を崇めているんだろう?」
《生産世界には、まだ神話が確立しておりませんでした。休人とほぼ同時に誕生した世界のようですし、神々で奪い合いが行われているのかもしれません。そして、魔導世界なのですが──》
「ですが?」
《大きく分けて二つです。一つは旦那様の世界で言うところのケルト神話、ルーン文字などが特徴でしょうか。北欧神話と似て非なる神話で、初代『騎士王』はかつて魔導世界に渡りルーン文字を学んだとされています》
うん、ルーン文字か。
ケルト神話云々は昔…………まあ、いろいろと読んでいたから分かるが、レベル999だったという初代『騎士王』が出てきた。
「まあ、故人のことはそのうち今のヤツに聞くとして……もう一つは?」
《はい。もう一つは──魔導神話です》
うん、絶対に知らないオリジナルのヤツ!