魔導世界密入 その23
魔導世界密入 その23
ついに対面した『八大星魔:必要悪』。
てっきりエンカウント後は即バトルと思っていたが、どうやら違うようで……。
「とりあえず、今は信じましょう。ただ、こちらもある程度警戒はします」
「…………」
[それでいい。さて、わざわざ十の魔道を選ばずここを選んだ理由を聞かせてもらってもいいか?]
「単純な話、ウワサに聞いた『必要悪』様の求めるコンセプトに興味を抱きまして。魔導士への対抗、ある意味私が求めていたのはそれです」
「…………」
[……と、言うと?]
言い方が悪かったのだろう、これではまるで術式をかっぱらいに来たみたいだ。
そう感じたのか『必要悪』からは、少なくない魔力の高ぶりを感じた。
「ああいえ、もちろんタダで術式を開示してもらおうなどとは思っておりません。相応の対価を提供し、かつ私自身の目的も開示させていただきますよ」
「…………」
[……ふむ、では聞かせてもらおう]
「はい。先に目的をお伝えしておきますと、転移を封殺する結界が欲しいのです。できるだけ広範囲、それも星を覆うほどの」
「…………」
[転移の封殺、なるほどそれそのものが魔導世界への来訪を決めた理由。そして、術式を活かすのではなく殺すことを選んだここを選ぶ意図か。合点がいったよ]
合点がいこうとまだ受け入れない、そう物言わぬ姿が物語っている。
だからこそ、こちらも魅力的な対価を伝えなければならない。
「──大前提、土産として渡すのはこちらの世界の『超越者』、『騎士王』の術式」
「……」
[──]
「加えて、私の持つ技術を用いた支援。こう見てても生産職的な能力がございますので。ポーションの提供や魔道具……魔装の修理なども承れますよ?」
ポーションが便利な回復アイテムなのは、どの世界でも同じこと。
当然、魔力をバンバン使う魔導世界であれば魔力回復アイテムは常備するのが普通。
だからこそ、俺がチラつかせたポーションに『必要悪』は目を奪われる。
効果が尋常ではない、チンピラでも分かることは強者にとっても価値があることだ。
「……」
[それは、どれほどの数が?]
「いくらでも、生産職ですので」
「……」
[──]
「何でしたら、数に限りはございますがこれより高純度のものを──」
「……」
[いいだろう。だが、しばらくはこちらも監視を付けさせてもらうぞ]
「ええ、どうぞご自由に。ただ、少しばかりご提案が──どこか目立つ場所で、一仕事させていただけませんか?」
そんなこんなで、俺は魔導世界にしばらく滞在することになった。
いろいろと問題はありそうだが……まあ、その時はその時だな。