魔導世界密入 その35
魔導世界密入 その35
なぜか『巫女』ではない『界樹の神子』。
その理由は、彼女がたった一言「あ」と発するだけで理解できた。
「……なるほど、神言でしたか」
「!」
「声を外部に漏らさない仕様で良かった。最悪、在らぬ疑いを被らせてしまうところでしたね」
神言、まあ文字通り神様の言葉……という意味でもあるが、要はそれぐらい影響力の強い声ということだ。
注目するのは、そこに『影響力(物理)』というおまけが付くこと。
正確には魔力関係の影響もあるが、まあその辺はさておき。
神様たちはつまり、存在しているだけで下位存在──つまり生物を傷つけてしまう。
だからこそ、耐性のある部下と共に影響の出ない場所から人々を見守っている。
話を本題に戻そう。
そんな神言だが、極稀に人の身でありながらそれを使える──使えてしまう存在が誕生することがある。
そこに価値を見出された時、人はその存在にこう名前を付ける──『神子』と。
「なるほど、その力ゆえにですか。まあ、私はこのような存在ですので問題ありませんのでご安心を」
「……『あぁ』」
「──、単語が増えれば増えるほど神言としての威力が上がるのですか。ちなみにですけど、術式などで言葉を代弁するというのは可能なので?」
「……」
[×]
つい数時間前まで、無口だが術式で喋る彼女の同僚と居たからこその提案だが……術式でたった一文字刻むだけで、膨大な神気による波動が周囲を荒らしていた。
むしろ、口という場所に集束していない分被害が拡大している。
……普段はどうしているのかと思ったら、彼女のすぐ隣に宙に漂う光が現れた。
『えっと、ごめんね。この子、いろいろと特別な生まれでね。普段はこうやって、私が代弁しているんだけど……ここの環境が特殊でなかなか潜り込めなかったよ』
「……自慢の結界なので、破られるのも問題なんですけどね。えっと、精霊……ではなく神霊でしょうか?」
『おっ、分かるんだ、さっすが精霊神様の加護持ち! この世界とは違う神話体系みたいだけど、授かっているんだから相当精霊に愛されているんじゃない?』
「…………それは、どうでしょうか?」
よく喋る光の玉、その正体は神霊。
分かりやすく言うと精霊の超上位互換、カテゴリー的には精霊神様がその中でもトップに君臨される形だろうか。
「私自身、精霊神様からいくつか恩恵はいただいているのですが、どうやら好かれてはいないようでして……今は、この子が目覚めるのを待つばかりで」
『ふむふむ、精霊神様のオーラを感じる指輪だね。たしかに、ナニカ居るような……あーうん、関わらないのが吉だね』
「──」
『えっ? あー、あとで教えてあげるから。ふんふん、いろいろと事情があるの! それよりほら、話を……了解。じゃあ、私が繋ぎ役になるから話を元に戻そうか。たしか、交渉がしたいんだっけ?』
とまあ、少し逸れたがようやく交渉に戻ることができた。
この世界随一の媒介系の魔導士、彼女であれば結界の強化が可能だろうか?