魔導世界密入 その41
魔導世界密入 その41
改めて、アイスプルや冒険世界を訪れることができたことを感謝した。
──つまり、そこを選んだうちの家族が最高ってことだな!
「っと、これは凄い──まさか、まだ余裕があるとは」
会話をする余裕があったのは、唯一敵対している『八大星魔:真海の主』が術式に使う海水の大半を氷漬けにしたから。
触媒は『凍死の氷晶』──『死天』謹製のアイテムである以上、海水そのものが死んだと定義されて扱えない……はずだった。
だが、どこからか大量の海水を集めてきた『真海の主』はそれをこちらに差し向ける。
すぐに『界樹の神子』が世界樹の根で防御してくれたが……問題が発生。
「……」
『あちゃー、こりゃ相手が悪い』
「奴の海は自在に調整ができるからな。植物が忌み嫌う、濃度の高い海にしているな」
「──」
[他にも生物を生み出す命の海、自然現象を生み出す魔の海など、いくつか特殊な海を生み出していた]
「…………本当に、どこの世界もトップレベルは常識というモノを知りませんね」
なぜだろう、この発言をした瞬間この場の全員に見られてしまう。
まるで、「お前が言うな」とでも言いたげな……俺は死に戻りをしているだけだぞ?
とはいえ、要は海という触媒さえあれば何でもできるというわけだ。
さっきのは地球に存在する『死海』、そのさらに濃度が濃い版を作ったのだろう。
あるいはもっと悪辣に、そうして植物が存在できない場所という定義に則り──生物が存在できない海、というものを生み出したのかもしれないな。
「ですが、海はご覧の通り氷漬けにしています。ご自身を包む海水は残されているようですが、それでも量が足りない……世界樹に必要なだけの海水をいったいどこから?」
「少なくとも、これまでの奴であればそこで詰んでいたであろう。元より、海の領域での戦闘のみとすることで強さを誇っていたはずだからな……強いて挙げるのであれば、やはり星渡りの民どもの入れ知恵か」
「入れ知恵……」
海をどこからか調達する、というのは別に不可能ではない。
この迷宮の中にも、海というか海の在る魔道を模した場所は存在する。
だが、そちらも封じられた際の考慮などしていて当然。
別の場所から持ってきた、というよりはどこからともなく生み出されていたし。
「海水を生み出す術式に心当たりは?」
「ある。だが、アレだけの規模となれば相応のコストも掛かる。海というのはそれだけ、我ら命ある生き物にとって意味のあるものという認識がある」
「──」
[同様に、海を変質させる権能もただならぬ魔力を使っていた。生成と変質、その両方を成立させていたとは到底思えない]
「……」
『たしかに、そうかも。あのね、さっきの海水にちょっと違和感があるみたい。たしかに塩っ辛いし気持ち悪いんだけど、何というか作られたもの? って感じみたい』
三人から挙げられた情報。
天才であればそこから真実を導き出せるのかもしれないが、生憎凡人である俺には精々絡繰りがあると勘ぐることぐらいだ。
──だが、俺には頼れる『SEBAS』が居るので問題無し!
「…………おそらく、海水を人工的に作り上げたのでしょう。海とは何か、神秘的な要素は分かりませんが、少なくとも私たち休人の世界においては、明確な答えがあります」
「ほう、興味深いな」
「端的に申してしまえば、塩分と金属成分が混ざった水です。つまり、構成さえ正しく整えてしまえばただの水を海水に──人工的な海を作り上げることが可能なのです」
正直、金属云々は『SEBAS』が教えてくれないと分からなかった。
だが、術式でこれまで作っていた海水はそれが足りなかったのかもしれない。
それを補うように魔力で何らかの細工をするからこそ、必要な魔力量が増える。
──そして、それを補ったからこそ、コストを抑えられたのでは、という見解だ。