魔導世界密入 その45
魔導世界密入 その45
両手に握り締めた二本の筆。
インストールと“神持祈祷”、双方で同じ『プログレス』を選ぶことでできる裏技。
いずれは誰かが女神プログレスの加護を用い、試すことになるだろう。
だが今は俺の特権、空に居る『真海の主』の術式をジッと見つめ……手を動かす。
「──“ブラッシュダウン”」
能力の効果は術式の改悪。
もちろん、正しい理解と術式への干渉が成功しないと効果は発揮しないのだが。
今回は模倣を済ませたうえで、術式を観察した『SEBAS』が穴を見つけている。
それを『ワイズマンブラッシュ』が、効率よく干渉してハッキングしていく。
「これで……掌握完了」
『!』
「ついでに“ブラッシュアップ”。改変、水分の完全掌握っと──『白氷』再現」
向こうの術式を一時的に乗っ取り、使えなくした。
だがそれは術式を再展開するだけで元に戻るので、稼いだ時間で次の手を打つ。
今度は自分の術式“模倣術式03”に手を加え、生成した人工海水だけでなくそれ以外の水分も術式の対象に加える──そして、毎度お馴染み『魔王の取腕』を起動。
選んだのは『超越者:白氷』。
権能は大気中の水分操作、これで足りない分を補う……そして重ねる、術式の改悪と改良を何度も何度も。
「──“ブラッシュダウン”、“ブラッシュダウン”、“ブラッシュアップ”……」
『──』
あちらもあちらで再展開をしつつ、さらにこれ以上俺が手を加えられないように攻撃を行っている。
何度もやっている内に、『SEBAS』が向こうの術式の癖を理解。
単純な改悪ではなく、術式そのものを不成立にする術を見つけ出してくれる。
その間に“ブラッシュアップ”を使い、自身の術式をさらに改良する。
より複雑に、より効率的に、より俺に適した形へと──
「そうですね。名前には貴方の異名を頂きまして──“真海支配”と呼びましょう」
『!!』
海の中身は変えられずとも、生み出された海の支配を可能に出来るようになった。
向こうが展開していた『魔の海』、それを掌握してあちらにぶつける。
とっさに海を破棄して捌いたが、これで自分を守る海が一時的に失われた。
すぐに鞘の転移装置を起動、視界内転移で『真海の主』のすぐ傍へ。
「──『快眠の死弾』」
反応する隙など与えない。
おそらく展開したであろう海以外の防御術式は、『生者』にサブセットされた[称号]の尽くが無視して貫通。
たった1ダメージ、だがそれで充分。
最後の抗いか俺を遥か遠くに海水で押し流した後──『真海の主』は、地面へと落ちていくのだった。