監獄生活 その08
監獄生活 その08
光の速さで動く星敵『光天軌涯』。
おまけに動けば動くほど、速さのバフを得てさらに能力値が高まるクソ仕様……そりゃあ危険視されるよ。
「──『星域』展開、“精辰星意”」
『?』
限定的にこの場をアイスプルと定義し、弱体化のデバフを展開する。
ほんの僅かではあるが、『光天軌涯』の速度が落ちて向こうも違和感を覚えたようだ。
しかし、現状では上がった分を抑え込むだけでまったくと言って良いほど変化が無い。
速度バフに限界があるのか知らないが、少なくともすぐに失われるものでは無いな。
「──“孤独蟲毒”」
重ねて使うのは死亡による自己強化。
本来ならば意味を成さない死後の強化も、何度でもその場で再起可能な『生者』であればこそ有効利用できる。
相手は弱く、自分は強く。
ゲームの戦術みたいな初歩的なやり方で、まずは場を整える。
多少下げたところで速度にさしたる変化も無いため、俺は相手の動きを認識できない。
一方的に蹂躙され、何も手を打てない──俺だけならば。
《旦那様、軌道を解析完了しました。網膜にルートを投影します》
《っし、これならイケるな》
何度も嬲られている間に、『SEBAS』が相手の動きを予測してくれていた。
これで反撃に移れる……と言いたいところだが、まだまだ問題が多い。
《うん、速度がまだまだ足りないな。真の武人なら動きを先読みして、『置く』ことでタイミングを合わせられるんだろうけど……いや普通に間に合わないって》
すでに体捌きのために『偽・武神』プログラムは起動済み、『プログレス』のコピーができる二種類の方法はまだ温存しているが、そろそろ使わねばなるまい。
「──『インストール:ヴィジョンアイ』」
『?』
「追加──“神持祈祷:デッドウェイト”」
未来視とデスペナ(他者)。
二つの『プログレス』を使用し、反撃に向けた準備を進めていく。
前者は攻撃の軌道を読むのを補助してくれるし、後者は“孤独蟲毒”と同じく死を媒介とした場の優勢化を図ってくれる。
……本来は周囲の死を必要とする分、使い難いものなんだけどな。
俺みたいなヤツが使えば、そのいろんな意味で重い代償を踏み倒して使える。
《ただ、これって相当時間が掛かるよな……外部の方、大丈夫か?》
《先の時間である程度、星敵たちも要領を得てしまっているようです》
《うーん、なら仕方ない──エクリ、出陣》
俺からは見えないが、今の思考によって動いてくれているはずだ。
すまんが時間が掛かる、時間稼ぎの方を任せたぞ。