監獄生活 その18
監獄生活 その18
雷で内部から炙ったあと、今度はウィルスの力を試してみた。
効果は覿面……とは言わずとも、ある程度通じることが発覚する。
「“ウルスウィルス”で強化する前提で、通常よりも治るのが早いってのは問題だが」
細菌を操る『プログレス:ベストペスト』の効果、それにより分裂体から分裂した個体が病気系の状態異常を発症した。
しかしながら、それ以外の──本体から直接分裂した個体には通用していない。
今はまだ……だが、時間が経つにつれて場の状況も少しずつ変化していく。
「まずは分裂した分裂体を経由して、感染が拡大。そのうえで、自己改良もとい改悪が行われる。時間は味方なんだよな……けど、手伝いをしてやる──『ストップウォッチ』」
針型の『プログレス』を握る手とは反対側に、今度は懐中時計が現れた。
蓋を開く上部の突起が、本来のソレと同様の──またはそれ以上の機能を発揮する。
「ほいっ」
能力名は存在するが、発現者の認識なのか宣言を必要としない効果が発揮。
蠢き分裂を繰り返していたナニカは、突如として動きを止める。
それが『ストップウォッチ』の能力。
ボタンを押すことで、一定時間に限り対象の動きを止めることができる。
なお、初期状態だと自他ともに停まってしまう不便な仕様。
だが使用者と『プログレス』が成長し、魔石で方向性を定めることで変化を遂げる。
まず同人誌のように、都合用の良い時間停止が可能となった。
自分は止まらないし、ある程度指定した物に関しては停止せず干渉ができる。
ただまだ完全では無いので、制限時間の方が割とシビアだ。
相手が強ければ強いほど効果は短いし、対象が多ければ多いほどそちらも同様。
「だから指定は分裂体の分裂体だけ、そして体内の動きはそのまま……要は金縛りみたいな状態にするだけなら、まあ充分だ」
するとどうなるのか──体内に潜伏中の細菌たちが、無抵抗な分裂体たちの中で一気に活性化していく。
意識はあっても体を動かせない状態、抵抗しようとしてもそれは肉体に影響しない。
そして、ナニカという存在の構造そのものについて理解を深めた彼らは成長。
より難易度の高い個体への感染を試み──そこで時間が切れる。
すると分裂体の分裂体たちが、仲間割れをするように本体からの分裂体を攻撃。
理由は単純、ウィルスたちが彼らを乗っ取り攻撃しているのだ。
その際に自らの一部を本体の分裂体たちに送り込み、更なる侵攻を行う。
抵抗をしようとするのだが──そこで再び時間が停まる。
時間は短くとも無防備な時間だ、当然何度も攻撃を受けて細菌たちが侵入していく。
時間は掛かるがこれが一番。
言っていることがコロコロ変わるが仕方が無い……自分の主張を真っすぐ突き通せるほど、俺は強くないのだ。