監獄生活 その19
監獄生活 その19
すぐ倒すのは諦め、時間を止めて細菌の感染を煽ったりしてみた。
異形の怪物であるナニカであろうと、いちおうは生物……じわじわと効いてきている。
「分裂体の分裂体に関しては、誕生直後に即感染させられるようになったな。そして、本体の分裂体にも感染させられた。時間も充分だし、俺もやっていくぞ」
針型の『プログレス:ベストペスト』。
それはある休人が発現させた代物であり、未だ誰も同種の力を発現させることのできていない災厄の『プログレス』。
まあ、同種の能力を発現させる方が珍しくはあるのだが。
最初は同じ名前でも、成長の過程で得た能力次第で変わることがあるし。
片手には針を、もう片方には懐中時計を。
戦闘にはまったく向かない……とは言わずとも、限りなく無力なアイテムを握り締めながら前へ進む。
「『SEBAS』、奴らの動きを操作することは可能か?」
《申し訳ございませんが、制御はできない仕様です。ですが、行動の予測は簡単です》
「まあ、患者が言うことを聞くのは医者だけなのは当然か……この方向性で成長させるような人では無かったか。まあいい、あの人なりのやり方そのものは否定しないさ──俺のやり方も否定させないけど」
かつて出会ったその使い手は、自らが目覚めさせたその力を危険視していた。
俺に敗北し、その後どうなったか……まあ少なくとも、ヤバいことはしていないはず。
現状を『プログレス』から読み取り、何となくそう思う。
集団感染系のヤバい能力があれば、その星の偉い人が排除に向かうだろうしな。
ある意味、俺と同じく星敵認定される可能性だってあるわけだ。
……蘇生薬や万能薬も通じない、そんな細菌を作られると困るな。
「射程距離は最悪、能力もまた最悪。でもまあ使い方次第じゃ人を救えるからな……俺にはできないやり方だけど」
針を持ち、懐中時計を時折カチカチ押しながら前進する。
本体の分裂体が発症しつつも俺に攻撃を仕掛けてくるが、それを躱すためだ。
ついでに無抵抗な彼らに対し、次々と針を刺していく。
仕様は先ほどまでと同じ、刺せば刺すほど細菌たちが内部へ侵蝕する。
「ついでに回収っと。採取、培養、そして注入……繰り返してやがて、本体に届き得るものになるわけだ」
ナニカ本体に関しては、ずっと変わらず分裂を続けていた。
……おそらくだが、今の姿になった時点で知性的なものが失われているのかもな。
「というわけで、着々進んでいるわけだ」
ナニカ自体は分裂のみ、分裂体たちが本来であれば対処を務めるのだろう。
だが、今それは少しずつ変化し俺への攻撃数も減っている──このままなら勝てるな。