監獄生活 その20
監獄生活 その20
細菌は異形の怪物にすら通じ、着々と彼らに通じる構成に自らを書き換えていく。
俺も針と懐中時計を手に、そのお手伝いを繰り返している。
「っと、やっぱりダメだよな……」
結論から言おう、最近は本体の分裂体を掌握するまでに成長を遂げた。
彼らもまた感染済みの分裂体を生成し、数において俺は有利になる。
がしかし、さすがにそこまでするとナニカの方も状況をおかしく考えたようで。
ひたすら行っていた分裂を止めると、再び自ら動き出した
「これは…………どうなるんだ?」
真っ先に行ったのは、周辺で謀反を起こし出した分裂体たちの鎮圧。
彼らをあっさりと叩き潰すと同時、自らの中へ取り込み再び吐き出す。
すると、感染したはずの個体が再び元の状態に戻っている。
再度針で突いてはみるが、どうやらまったく効果を成さない。
「……どういうことだ?」
《おそらくですが、耐性といったレベルではなく、一から……いえゼロから自らの構成を書き換えたのではないでしょうか?》
「! そうか、最適ってことは逆に言えばそれ以外には適してないってことだもんな! でもまさか、そんなやり方をしてくる生物がいるなんてな……世界、というか宇宙は広いみたいだな」
細菌をあえて取り込み、自らに影響を及ぼさないように細菌ではなく自らを改造。
完成した自らの情報を分裂体たちにも書き込んでいけば、細菌の効果は失われる。
脳がどこに在るのか分からないが、かなり知性はあるのかもしれない。
再び分裂体たちに細菌を刺してはいるが、全然効果は発揮されなかった。
分裂体たちはそれ以上分裂せず、直接攻撃してくる。
普通ならばある程度、得た情報を基に時短で細菌を強化できた。
だが今回の場合、見た目が同じだけのまったく別物になっているに等しい。
懐中時計で動きを止める方は、いちおう効果は残っている。
しかしそちらも、だんだんと停止できる時間が減っていた。
これは単純に耐性が付いていって、無効化されつつあるということ。
「この作戦はもうダメか? ……いつまでも粘っていても無駄だし、切り替えるか」
《旦那様、それでは次は何を?》
「とりあえず警戒を。土壇場のアドリブ勝負でやってみよう」
結局のところ、俺個人で考えられるアイデアはすべて尽きていた。
……やっていればアイデアも浮かぶだろうし、そのまま動いてみるつもりだ。
普通ならそのまま失敗するオチが見えているのだが、俺には『SEBAS』が居る。
いったん針と懐中時計を消し去り、再びナニカへと急接近するのだった。