脱獄計画 その06
脱獄計画 その06
邪悪深殿 十層
ただただ狩られるだけじゃない、看板で順番待ちを主張した俺を阻もうとする星敵が居なくなるぐらいにはいろいろやっている。
「──ふむ、ここが十層なんだな」
今まで報告だけは受けていたが、自分の目で見たことは無かった十層。
ただし、情報はバッチリなのでボスへの対策も抜かりは無い。
「まあ、まさか十層目でこんなとんでも生物が出るとは思ってなかったけど」
『『『クィイイイイイイ!!』』』
「『 邪多頭 イビルマルチヘ 鷲獅子 ッドグリフォン 』、奇天烈過ぎてビックリだよ……」
一つの体に無数の頭が生えたグリフォン。
邪という単語がよく分かる、禍々しいオーラとドス黒い体毛を持つその個体こそが十層のボスだ。
よくある頭の同時討伐が必須な存在で、周囲に瘴気などの負のエネルギーが存在する限り何度でも再生する厄介な能力を持つ。
「今は侵略者の影響で黒い靄が迷宮中に溢れているからな…………っておい、よく見たら憑りついてるし」
階層十に靄があるため、少々気づくのが遅れてしまった。
三つ……いや、今増えて四つになった頭の内の一つが、侵略者の纏わりつかれている。
なお、頭は今説明した通り、時間経過で最大十個まで増えてしまう。
……なんでだろう、ここに関しても嫌な予感がするな。
「『SEBAS』、これって侵略者と……例の干渉で制限が無くなったりしてないか?」
《──可能性は、ゼロではございません》
「うわー、クソゲー」
『『『『『『『クィイイイ!』』』』』』』
俺を嘲笑うように、グリフォンの頭が一気に七つに増えた。
そして、口に魔力を溜め込み──暴風やら雷の猛攻撃を放ってくる。
「──“万物闇換”」
何でも闇に変換できるチート能力を発動。
ただし一定以上のエネルギー量だと変換しきれなかったり、特殊なエネルギーだとそもそもできない場合もある。
侵略者の靄や邪悪な存在の有する力など、負のエネルギーはできなくはないが変換効率が悪い。
それでも魔力でごり押し、強引に闇と化して無効化していく。
しばらくして攻撃が収まったと同時、反撃に打って出る。
「──“ 影蹂満 カゲフミ ”」
取り出すのは懐中時計。
一歩足を踏み出すごとに、その場所だけが黒さを残し暗くなる。
歩けば歩くほどそれは広がり、やがて十層のほとんどが同じ状態になっていた。
空を飛んでいるグリフォンだったが、突然力が足りなくなったかのように落ちてくる。
──『影踏吸[カゲフミ]』。
かつて大量発生イベントで得たポイントを使い、ガチャをした結果出た 遺製具 レリック 。
普段の俺では使い物にならないそれは、大変エクリとの相性が良いアイテムだった。
エクリ自身の陰、その足元から影がどこまでも広がっていく。
自らの闇を操り、[カゲフミ]の範囲を足場以外にも展開しているのだ。
そのため、制約であった領域の制限もほぼ無くなったに等しい。
俺は俺で本来必要な対宙での発動条件である、対象の影を踏んで効果を発動。
それはエネルギーの吸収。
ただし、こちらもまた自分の身力を消費しないと速度は酷く緩やか……その代わり、注げばボスでも通用するレベル。
溜め込んだエネルギーは、懐中時計である遺製具に注がれる。
内部では針がどんどん回り、その貯蓄量を示している──さて、試してみますか。