脱獄計画 その18
脱獄計画 その18
夜、街(仮)の中で手に入れておいた拠点で一休み([ログアウト])……という寸前で来客を知らせるノック音が。
無事、死亡したことで処理が中断された俺は意識を切り替えて来客の対応を行う。
「どうされたのですか、こんな夜分に」
「──貴方がたからすれば、そのようになってしまうのでしたね。ええ、我々からするとこの時間こそが活動する時間ですのに」
「種族あるある、というヤツですね。まあ、私は普通の普人族と違って星渡りの民ですので。昼夜逆転の活動には慣れていますが……えっと、本当にどういった御用で?」
星敵は種族問わず、星がその存在を危険視したすべてが対象だ。
なので夜行性の種族や魔物、またそもそも睡眠が不要な存在なども含まれる。
今回の来客もまた、種族単位で夜行性な性質をお持ちの方。
……まあだからと言って、当人は別に昼行性に適応できないわけじゃないけど。
──【傾界魔王】。
とある世界で誕生した、傾国よりも厄介に世界すら傾けたとされる吸血鬼の姫。
それこそが、現在俺の前に立つ存在。
西洋人形のような整った顔立ちの、それこそ子供のような背格好をしたゴシックロリータ姿……だが、放つ存在感が圧倒的だ。
当然、そんなヤバい存在を星は星敵として認定したのだが……ここで起きる異常事態。
理由は教えてもらえなかったが、彼女自身は星敵では無いらしい。
ただ、それでも星敵として得られるリソース自体は星からかっぱらっているようで。
この監獄に(自分から)赴き、騒動を見て楽しんでおられる。
「例のアレ、頂けますの?」
「アレ、と申されますと……『プログレス』のことでしょうか?」
「ええ、察しが良くて助かりますわ。権能を持たぬ者にしか使えぬ擬似権能、これまで生きてきて初めての代物──ええ、ぜひとも試してみたいわ」
「それでしたら、情報屋さんに声を掛けていただければ……」
今も雇用関係が続いている情報屋に、いくつか渡してあるのだが。
星敵というリソースで権能を得ている彼らなので、使えないにせよ試せるので。
「いえ、貴方から直々に頂きたく。だって、その方が面白そうですもの」
「面白そう、ですか?」
「ええ。それで、頂けますの?」
「それはまあ、もちろん。お望みとあらば、お渡ししますよ」
理由は分からないが、何となく分かる。
ルリにせよ『騎士王』にせよ、超常的な者たちは独特の感性をお持ちだ……目の前の少女(見た目は)もまた、そうなのだろう。
すぐ[インベントリ]から『プログレス』の雛形である宝石型の装置を取り出すと、それを手渡す。
使い方に説明しようとしたその時──
「なるほど、こうですのね」
──彼女はそれを、躊躇うことなく体内に突き刺した。