脱獄計画 その19
脱獄計画 その19
夜の来客、それは星敵を収容した監獄の中でも珍しい非星敵(暫定)の吸血姫。
求められるので『プログレス』を渡したところ──躊躇なく、それを体に突き刺した。
「……あら、場所は固定ですのね」
突き刺した場所は心臓。
だが、仄かな光を放った宝石型の装置は、体の中を循環してその位置を変えていく。
彼女が華奢な左腕を伸ばすと、その手の甲には先ほどまで無かったものが。
つい先ほど、体内に埋め込んだはずの装置がそこにはあった。
「はい。決まりのようなものですので、言わば発現者であることの共通項ですね。移植ではなく装備の場合ですと、少々勝手が違うのですが……いづれにせよ、所有していることが分かるようになっています」
「そう、それならばいいのだけれど……」
使用者のパーソナリティを基に、能力を決める劣化──もとい改悪版願望機。
個人用にダウンサイジングされているが、その力自体は本物。
中にはすぐ発現する者もいるのだが、どうやら彼女は違ったようで。
……あるいは、『プログレス』の方が彼女に見合う力の有り様を探っているのかも。
「最低で一日、遅くとも十日は掛からずに能力は発現するでしょう。少なくとも、役に立たないものではないと保証します」
「あら、それはどうしてですの?」
「そういったものを読み取り、理解することができる代物ですので。では、そろそろお開きに──」
「お待ちを。たしか、[メニュー]だったかしら? その使い方が知りたいわ」
「……畏まりました」
休人の便利なシステム、その大半が組み込まれた[メニュー]。
当然、[ログアウト]は無いが流通チートである[インベントリ]は存在する。
他にも時間が分かる[クロック]、場所が分かる[マップ]、情報チートである[ウィスパー]などなど……いろいろと説明する。
「……そうね。[フレンド]、これ、数に制限があるようですけれど?」
「能力によっては増やせるようですが、基本的にはそちらの人数のままのようですね。なので必要に応じて消したり増やしたり、また条件を付けて自動的に減らしたりしているようですよ」
実際、[フレンド]の機能自体は休人のものと同じなのでこの説明が当て嵌まる。
さすがに無制限に[ウィスパー]をされても厄介なのだろう、こういう制限があった。
それを使えるのも、あくまで[フレンド]として関係を結んだ者のみ。
いきなり名も知らない誰かとやり取りを、なんてのはある意味恐怖現象だし。
人数は100、まあそれを少ないと見るか多いと見るかはその人次第だろう……商売関係のことをやっている人的には、もっと増やしたいだろうしな。