脱獄計画 その20
脱獄計画 その20
吸血姫が『プログレス』を移植(物理)。
能力の発現はすぐには起きないので、代わりに[メニュー]周りのシステムについて説明を行う。
あの後、強引に[フレンド]登録の処理をされてしまった俺。
抵抗はしたのだが、何やら[称号]を押し付けられ自動的に[フレンド]になる。
もともと似たような呪いのようなものが存在し、『プログレス』や当人の認識によって効果が変化する……なんてことを考えて、当時は現実から目を逸らしたものだ。
「──『アップ・ロード:■■■■■■■■■』…………くっ」
「そうか、ダメか……」
「申し訳、ありません……」
そして現在、俺とエクリは街から離れた場所である実験を行っていた。
それは吸血姫──【傾界魔王】が数日後に発現させた、『プログレス』の再現実験。
俺の管理者権限を利用し、バレることなく条件を満たして発動を……といったところで問題が発生。
「やっぱり、マスター系はダメなんだな……【魔王】でも分かっていたし、他の奴らもそうだったから気にしなくていい」
その名が付いてさえいれば、どんな能力であろうと必ず凄まじい性能を秘めている──それが『○○マスター』という能力。
だからこそ、俺もそれを我が物に……というノリで何度か試していた。
しかしその思惑が成功したことは無く、一度として再現はできていない。
──察しの通り、吸血姫が発現させたのもまた『○○マスター』という能力だ。
「いやはや、まさか器の方が不足している扱いになるとはな……エクリなら、と思ったんだが。正規の発現者って、どれだけ器が大きいのやら」
たとえば俺がインストールを介して、試してみようとしよう。
その場合、まずそれを落とし込むための媒介が耐え切れなくて失敗する。
また、“神持祈祷”も同様。
女神プログレスの恩恵があろうと、彼女が信仰によって得ている力が足りず、一部の協力無比な『プログレス』は選択できない。
何より、それを落とし込んだとして、俺という器もまたその使用に耐えられないのだ。
死んでもすぐ蘇るので問題ないのだが、永続的に死ぬのでダメらしい。
だからこそエクリ、人造の固有種のスペックならばと試してみた……それでもダメという結果に終わる辺り、『○○マスター』は人知を超えた権能と化しているのだろう。
「ある意味、本物を超えた偽物……みたいな感じになっているな」
《いづれは、旦那様も使用できるようになるでしょう》
「確認するが、それって俺の器がどうにかなるからか? それとも、技術の進歩やらプログロスへの信仰が高まるからか?」
この後しばらく、『SEBAS』は何も語ることは無い。
そっと上を仰ぎ見た俺は、何かが流れないように手で両目を覆うのだった。