脱獄計画 その23
脱獄計画 その23
新たな休人の収容者は、星敵たちから嫌われている。
それでも得た情報を[ログアウト]して外部へ持ち出す彼に……俺は仕掛けた。
『──、──ッ!!』
どこかで叫び声が聞こえる。
それ自体はこの星敵が住まう街でもよくあることなのだが、今回は特別……叫ぶだけで何もできず、破壊音が響かないからな。
「さて、上手くいったようだな」
そう呟く俺の肩には、スコップが一つ。
声の発生源は地下──お察しの通り、俺は彼が[ログアウト]を行った座標から真っ直ぐ下に穴を掘った。
もちろん、それだけでは自動的な調整により[ログイン]の座標が少しズレてあっさり回避される──だからこそ、そこにもう一工夫する。
「『トラッシュクラッシュ』と『クロノトリガー』で予約、穴の上から設置してあった蓋が勝手に壊れて──穴の下に……条件が満たされるまでは普通の蓋だから引っかかった」
ただ穴が在るだけなら動くし、誰かが乗っただけで落ちる軽い物でもまた同様。
だからこそ、穴自体はきちんとした作りをしていた。
この世界のアイテムが、耐久度というシステムで存在しているからできたこと。
特定の存在──休人が乗った時だけ発動することにして、普段は崩れないようにする。
たったそれだけで[ログイン]後の奇襲を成功させ、嵌めることができるのだ。
……いやまあ、いづれは対策されるかもしれないけど。
「さて、様子はっと……あっ、ヤバッ」
「──おらぁあああああああ!!」
念のため穴に仕掛けておいたカメラで、下の様子を探ろうとした。
するとそこには、物凄い勢いで上昇してくる休人の姿が。
何をどうしたのか分からないのだが、おそらく風の魔法か何かを使ったのだろう。
カメラが激しく揺れ、休人の足元に何もないのに浮かんでいることから予測する。
「誰だか知らねえが、こんなことしてタダで済むと思うんじゃねぇぞ!!」
「あわわ……とか言うわけありませんよね。では、有料であればOKという言質も取れましたし──『エクスベイター』」
肩に載せていたスコップ、それは穴掘りに特化した『プログレス』。
いくつかの形状を取り、それに合わせた効果を発揮するというもの。
今のスコップモードだと、掘った物に限定した重量軽減など。
──そして俺の隣には、穴を掘った分だけ溜まった大量の土が。
「……」
「急に暗く……ぺぺっ、これ土か! おいまさか、止め──!」
「……」
「ぐぼぉお……」
そこからは、ガンガン土を載せては落としていくだけの単純作業。
普通なら簡単に跳ね除けられるだろうが、今回は量で勝負。
穴の深さが数百メートルで、その分だけ溜まっていた土を一気に解放。
運んで落とす一連の動きも、どうやら補正が働く謎の『プログレス』効果。
……これを発現した人、そこまで執念深く穴に何かを抱いているのだろうか。
そう思わなくもないが、今は便利だからと情けは掛けず続けるのだった。