脱獄開始 その07
脱獄開始 その07
情報屋が求める『邪悪深殿』の守護者──この世界の意志、そして遺志。
だが一度目の接触以降、俺が赴いても彼女に会うことはできなかった。
「……」
「私としても、いろいろとしたい話はあったのですがね。同様の手段を用いても、少々卑怯なやり方をしても結局あの場所に行くことはできませんでした」
「…………そうか」
分かっていたのだろう、大した反応も無くそう返す情報屋。
迷宮を壊す程度で入れるなら、情報屋が星敵を誘導するだけで辿り着くだろう。
しかしながら、あの迷宮はそんなヤバい連中が暴れる前提で星々が築いた場所。
相応の強度で生み出されたそこは、ある意味宇宙最硬の迷宮となっていた。
「──もう行け、話すことはこれ以上ない」
「そうですか……分かりました。それでは、また次の機会に」
何度か粘ったことがあるが、結局何も話してくれなかったので俺も大人しく去る。
創作物なんかだと、たまに出る寸前で呼び止めるのだが……そういうのも無いからな。
「……代わりにこういうのがあるけど」
「──見つけたぞ、『生者』!」
「ハァ……ここだと攻撃できませんけど、何のつもりで?」
建物を出た俺を襲撃したのは、金髪かつ上の辺りが茶髪のプリンヘッドな男。
装備の方もそれなりに充実しており、程ほどの実力を持っていそうな感じ。
「へっ、なら合法的に挑むだけに決まってんだろう。俺と[PvP]で──」
「やりませんよ、面倒ですし。それに、私に一切のメリットがありません」
「……はっ?」
「では、これにて。私はこれから、カフェでティータイムを迎えますので」
「──って、待てぇえええ!!」
戦闘が禁止されている場所でも、お互いが了承のうえで[PvP]を用いることで戦闘は可能になる……がそれをしたところで、俺に得られる物などごく僅かだ。
なので適当な理由を付けてさっさと立ち去ろうとしたのだが、俺の認識を超える速度で回り込んでしまわれたため、逃げることはできなかった。
「……あの、まだ何か?」
「ふざけんじゃねぇよ! そう簡単に逃がすわけねぇだろう!」
「いちおう言っておきますが、貴方のような方はこれまで何人もいましたよ? 出し抜いて一番に倒し、報酬を得る。そうでなくとも死なない以上情報を集める、なんて打算的なやり方を思いつくのは」
そりゃあ休人もそれなりに増えてきたし、誰でも思いつくことだしな。
相手も身体スペックが高いので、逃げるのも面倒になる。
──だからこそ俺は迷わず歩を進める、その足元では影が蠢いていた。