脱獄開始 その13
脱獄開始 その13
邪悪深殿 ???
監獄に来ている連中のヤバそうな案件について語っていたら、[メール]が届いてきててんやわんやな俺。
向かった先はお馴染み『邪悪深殿』、急に入ってきた俺をどうしたもんだと星敵や休人たちが見てくる。
だがそんなものに構っている暇はない。
自分の意見を一方的に、この場に居る者たちに対して告げる。
「募集、護衛! 報酬、最上級メニュー!」
『──ッ!?』
「目的地は五十層! 敵は混沌の使徒、狙いはこの迷宮の簒奪です!」
次々と集う仲間たち……その目にはギラギラとした隠さない欲望が。
うん、友情も努力も無い、そこにあるのは果てしない食欲だけだ。
なので誰も最後の辺りは聞かず、目的地となる五十層へ向けて転移陣で飛んでいく。
まだ辿り着けていない者も、可能な限り誓い階層へ向かっていることだろう。
「さて、残ったのは……休人がほとんど、それに貴方も残りましたか──『霧疫』さん」
「おいおい、つれない態度だな。俺とお前の仲だろう? もっと気安くいこうぜ」
「……では、[インベントリ]の中に仕込んでいる細菌兵器を全部処分していただけるのでしたら、そうさせていただきましょう」
「おっと、俺とお前の仲もどうやらここまでみたいだな。悪い、お前よりも俺はこの子たちの方が大切なんだ」
この子たち、と言って取り出した試験管に口づけをするヤバいヤツ。
それこそが『霧疫』──少し前に話した魔薬を得てはならない 最厄 ・・ の星敵だ。
「それで、休人の方々はともかくなぜ貴方までこの場に? 混沌の使徒として、私を妨害するように言われましたか?」
「んー、うんにゃ。たしかに言われたけど、そんなことはどうでもいい。俺も向こうも、お互いの目的のために利用しあっているだけだからな──『生者』、お前を殺したいってところだけな」
「…………いつも殺しているでしょうに」
「違う! お前は俺の子供たちで死んでもすぐに蘇っている! それはつまり、まだこの子たちに永続的な死をもたらすだけの力が足りてないってことだ! まだだ、これじゃまだ足りない!」
お察しの通り、『霧疫』は凄い細菌兵器が作りたい欲望を抱き、その果てに星敵と認定されて鎮圧され、ここに収監された。
そして彼の願いは自身の納得がいくレベルの細菌兵器を作り上げることであり、俺という存在がそれを阻む最大の壁となっている。
まあ、死んでも死なない……いや死んでいるけど、活動しているわけだし。
休人たちも同じ条件なのだが…………少々違和感が。
「そういえばそちらの方々、何もしてこないようですが……まさか」
「ん? ああ、体だけ貰ったぞ」
「…………できたのですか」
「お前という例外を除いてな! ったく、どういう仕組みなんだよまったく!」
要はこの男、リセットされるはずの休人のアバターを奪い取ることに成功したようだ。
よく見たら生気が無いし、人形みたいに立ち尽くしている……やっぱり最厄だな。