脱獄開始 その15
脱獄開始 その15
汚物は消毒、ということで細菌に操られている休人たちを火炙りにした。
触媒は『死天』の灯油、燃え盛る業火が大半のモノを燃やし尽くす。
「おいおいおいおいおい! よくも、よくも俺のリアを殺してくれたな! 許さない、許さないぞお前!」
「……貴方のその細菌も、休人たちを殺しているではありませんか」
「それはリアじゃなくてトートだ、次間違えたら殺すぞ」
「知りませんよ」
異なる試験管をチラつかせ、怒ったかと思えば一瞬で無と化した表情で脅す『霧疫』。
リアという細菌は休人のアバター操作、そしてトートという細菌に殺す力があるのか。
それが分かっただけでも、怒らせた価値が無いわけじゃない。
普通、細菌の見分けなど一般人につくはずなど無いが……『SEBAS』が居るしな。
《【見習い科学者】の職業能力により、各細菌の知覚に視覚サポートが行えます。試験管ごとに色付けをしておきましょう》
見習い系の職業は、正規の職業に就く前に補助的な要素を身に着けるものが多い。
戦闘系であれば武器の扱い、生産系であれば道具や素材の扱いなど。
いちおう【科学者】は生産職であり、その見習いは素材である科学の品に補正が入る。
細菌自体は別系統なのだが、調べるものとして扱われるのかこういったことができた。
色付けされた細菌たち。
それらが宙に広まっている光景が、突如として視界に入ってくる──そして、その一部が俺にじわじわと寄っている姿も。
「! ──“掃風”!」
「おっ、マジか気づいたか……そういう系の能力でも持っていたのか? いや、だがそれならもっと前からやっているはずだが……隠してたのか?」
「さて、それはどうでしょうね」
とっさに仙丹を用いた風で吹き飛ばし、実際細菌が周囲から居なくなったことを確認。
だがその対処は当然向こうに情報を与えることになる……今までもやられていたのか。
どうやら同じことを何度かやられていたようだが、今までは気づいていなかった様子。
あるいは接触せず、また俺を殺さないような細菌でも撒いていたのかもしれない。
いくら虚弱とて、まったく何もしない細菌に殺されるわけではないからな。
生きているだけで死ぬほどではない、という肉体の強度が問題だったわけだ。
「まっ、今回はこれが目的ってわけじゃないから別にいいんだけどさ。おい、リアの培養用のヤツ以外で封じてこい。アレもちゃんと使えよ」
『──』
休人の抜け殻たちが、使役者の『霧疫』の指示で俺に攻撃を仕掛けてくる。
アレ、と言う物もまたすぐに分かった──ドロドロとした液体が詰まった注射器だ。