脱獄開始 その20
脱獄開始 その20
誰も助けに来れない中、混沌の怪物たちに襲われている俺。
旗を槍に変形させて、あくまで時間稼ぎに徹することに。
「よいしょっと。戦闘力が無い以上、あまり無茶はできませんね……」
『■■■……!』
「はいはい、避けますよー」
攻撃はしない、ただ避けるだけ。
突き刺そうにも威力が足らず、振り回そうにも軽い──俺の攻撃力の低さ、そして異形の怪物たちの柔軟さが問題となっている。
だからこそ槍、ではなく棒としての使用。
槍を地面に刺し、体をくねらせて攻撃を回避していく……気持ち悪いポールダンスのようになっていた。
「……うわぁ」
「何も、言わないでください」
星敵たちからはなんだか気味の悪い物のように見られているが、今は生きることを優先して続行。
時に重力を軽くし、槍を上に下に横にと動き回っていく。
痺れを切らし、怪物たちが範囲攻撃で俺の周りを攻撃──する前に撃ち抜かれる。
「『生者』、無事……ではないようだな」
「この状態を無事ではないと言わないでほしいのですが……まあ、肉体的なダメージは無いですね。肉体的には」
周りを軽く睨むが、誰も目を合わせてくれなかった。
足止めを突破して助けてくれた『修羅』ですら、目の焦点を合わせていない。
まあ、ダンスは元より上手くないし、あくまで回避するための動きだったわけだし。
槍を引き抜き、“スパイラルフラグ”を解除して旗の状態に戻す。
「よしよし、充分に溜まったな──“スイングスパイヤー”!」
いつの間にやら、使い手の【革命英雄】が習得していた新たな能力。
本来“神持祈祷”では、条件を満たせていない高位の能力。
インストールした時点で理解していた、だが当人でも満たせばならない条件があるためすぐには使っていなかった。
「『さぁ、反撃です』!」
俺の言葉に意味は無い。
だがそこに、職業能力が作用してただの言葉に強いバフ効果が働く。
それは今まで旗を靡かせていた時よりも格段に、遥かに高い効果を。
星敵たちも突如として高まった身体能力に驚きながら、それでも蹂躙を開始した。
「……これは、なんだ?」
「“スイングスパイヤー”、振れば振るほどこれまでの支援がさらに強化されます。ただし振っていた時間がそれなりにならないと発動できませんし、広く大きく振る必要もございます」
「前提がしっかりしている分、効果が保障されている能力か…………危険だな」
「ええ、でしょうね」
いちおうバフに限界量はあるが、それもおそらくマスター級に達すれば無くなる。
同様に、他の『プログレス』もまた成長すれば破格の能力を得られるはずだ。
権能と違い、個人でカスタマイズできる点もヤバい。
今はまだ、権能の方が勝っているが……いづれは同格ぐらいになるんだろうな。