脱獄開始 その27
脱獄開始 その27
塔が展開する結界を剥いだが、今度は入り口から舌が飛び出して道を阻んできた。
星敵たちをも一掃するその強さに、俺は違和感を覚える。
「……なるほど、吸収でしたか」
追い出された星敵たちの様子を伺い、入る前と後での違いを確認。
すると分かったのは、異様なまでにすべての[ステータス]が減少していたこと。
レベルなどはともかく、身力値だけでなく能力値までもが減衰している。
幸いなのかあくまで一時的なもので、加えて万能薬を飲めば治っていた。
では奪われたものはいったいどこに、その答えは目の前の塔にある。
解析が得意な星敵が見た結果、奪った数値が加算されていることが判明した。
「条件は塔の周辺への侵入、といったところでしょうね。そしてその被害度合いは、これまでに倒した混沌の怪物たちに比例する……厄介ですね」
星敵たちに関しては、弱体化程度で済んでいるがそれはかなりの例外。
彼らは純粋に強いので、耐性の方が本来起きうる吸収をそれなりに抑え込んでいる。
だが普通の原人や休人が、ある程度怪物を殺してから来ていたら──ほぼ死ぬ。
ギリギリ生かされるだろうけども、一体倒すだけで一割ぐらいは奪われるはずだ。
「そして、持っていって余らせたエネルギーが塔の内部で用いられていると…………これで全部ですかね?」
《ええ、現状思いつくであろう策はすべて》
「──では、始めましょうか。こちらから反撃です」
想定外の展開、それに抗う主人公というのは物語でもよくある話だ。
しかし現実でそんなことをされては、ただただ心身にキツい。
なので念入りに、準備を万全に整えたうえで塔の攻略に挑む。
手抜きはしない、星具をフル装備かつ保有する遺製具を複数装備していく。
「『生者』、それは……」
「『修羅』さん、護衛ありがとうございました。ここからは、私一人で内部へ」
「…………策があるのだな?」
「そうでもなければ、こんなことしません。メカトラ、もう一つの方を使いますよ」
『ガウッ!』
呼び出すと共に、虎型の願望機はその姿を巨大な鍵へと変形させる。
すでに『展虎解放』は使用済みで、しばらくは使えないが……逆は可能だ。
「まずは閉じます。入り口を、ではなくこの空間そのものを。外部からのアクセスを閉ざすことで、向こうが更なる手を送り込めないようにします──『堅虎封緘』」
狙ったのは塔ではなく、この空間。
ゆえに突き刺すのは眼前では無く、自らの真下──地面に向けて勢いよく刺した鍵を、左方向へカチリと捻る。
何かが閉じた音が響く。
そして、大きな変化が──起きるわけも無く、戦闘音だけが鳴っている。
これでいいのだ、むしろ何かあった方が困るわけで。
現在、この場所は隔離された──何をしても、今ならば対処できない。