脱獄実行 その04
脱獄実行 その04
星層監極 街
脱獄の計画を立ててはいたが、休人たちから情報が漏れたことで強者が監獄に入ってくることが予測された──『騎士王』とかが来たら、間違いなく封殺されるな。
「……というわけで、切り札が必要になりました。ご助力の方、願えませんか?」
俺は今、『邪悪深殿』に設けたセーフティゾーンから出て街へ戻ってきていた。
正直この瞬間も危険がいっぱいだが、ある意味今いる場所だけは外部からは安全だ。
逆に言えば、内部──つまり部屋の住人だけは例外とも言えるのだけれど。
ゴシックロリータに身を包む、人形のような精巧な美貌を持つ少女。
「【傾界魔王】さん、貴方にお力添えをしていただきたく」
「いや、と断ってもいいのでしょうけれど。何か交渉のために持っているのでしょう? それの内容によっては、とりあえず考えてもいいですわ」
「ええ、それはもちろん」
彼女は星敵であり、『プログレス』を有するという一種のイレギュラー。
だがその仕組みは一言で説明できてしまうほど、簡単なもの。
星敵の権能を分離し、『プログレス』用の枠を確保している。
権能を外枠に保持する、それは最上位職の能力と同じ仕組みだった。
一度は再現をしようと思っていたが、難易度以前に『騎士王』や優秀な権能持ちたちがそれを成し得ることを恐れて止めていた……が、現状でそんなこと言ってはいられない。
少なくとも『生者』の権能を分離、そこに本来貰えるはずだった星敵分のリソースを注いでおきたいのだ。
だが、その方法を俺は知らない。
知るための術も含め、【傾界魔王】にはいろいろと感づかれているため、下手な手は打たないようにしていたからだ。
しかしながら状況が状況、多少強引にでもやっておきたい。
そんなわけで、俺が彼女に対して持ち込んだ手土産は──
「こちらを」
「あら、星宝珠じゃありませんの。今の世界の技術力でよく用意できましたわね」
「伝手がございまして……中身もお察しの通りかと」
「──固有種、ですわね。それなりに格もありそう」
星宝珠、それは超高濃度のエネルギーを基に構築される特殊な球体。
必要な素材が尋常じゃないほどレアで、かつ最上位職で無いとほぼ加工できない仕様。
だがそれそのものの効果は絶大で、属性魔力を籠めれば奇跡と呼ばれるレベルの効果を引き出すことができたりする──今回はそんなアイテムに、固有種を封印していた。
「こちらが封印されている固有種の情報となります。遺製具にするもよし、またそのままの使用も問題ないかと」
先ほど【傾界魔王】が今は作れない、というような言動を見せたのはこれが原因。
固有種を封印した星宝珠は、内部の固有種の能力を限定的に引き出すことができる。
つまり遺製具のように唯一の使用者ではなく、誰でも同じ効果が発揮可能なのだ。
……それゆえいろいろあって失われた技術だが、俺には鑑定の拡張情報があるからな。
「…………もう一押し、でしょうか」
「……まだ何か?」
「情報自体はまあいいでしょう、教えてあげますわ。これはいわば裏技、【傾界魔王】の権能によるものですわ。貴方のあの手、アレがあればまあできるにはできますわ」
「知られておりましたか」
冒険世界の【魔王】、ドッペルゲンガーの【魔王】から得た細胞を基に構築された権能拝借用アイテム。
少なくとも当人が生きている限り機能するそれは、触れた対象が持つ権能を擬似的に奪い模倣する代物──複写と簒奪、それらを同時に行う代物だ。
だがバレれば相手の反感を買うのは当然だし、それに気づく相手だと分かっている以上【傾界魔王】には使っていなかった……どうやら、問題はここになるようだな。