脱獄実行 その21
脱獄実行 その21
槍の武技を連続して使いだした『武尽』。
対する俺は能力値の低さから、死亡による自己強化術式を発動する。
「さぁ、加速していきますよ」
「まださして変わらんが……ふむ、受けて立とうではないが!」
強化量は微々たるもの、かつ短期的であろうと重ね掛けすることでほぼ無限にバフの維持時間を確保できる……そんな術式だからこそ、確実に条件を満たしていく。
その間も槍は振り回される。
その一撃一撃を回避し、強烈な衝撃を受けないで自死のみを繰り返していく。
結界のモードが変更され、振動を完全に吸収しない仕様になっている。
その揺れだけで死ぬような貧弱な体、それが功を奏し自己強化は高まっていった。
「──“ 納刀 ノウトウ ”、“ 居合 イアイ ”」
「むぅ、これはちと……強くなったわい!」
「ええ、お待たせしました。そろそろ技巧以外でも勝負できますよ──“星変万還”」
刀を鞘に納める。
これは『星核の武玉』が生成したものではなく、転移をする際にお馴染みのソードデバイスだ。
どんな刀剣でも対応可能なスキルが付与されているので、鞘は刀を最適な形で納める。
そしてそのまま抜刀、勢いを鞘の中で加速しながら減衰させることなく薙ぐ。
圧倒的な技巧(の再現)、そしてそれに見合う膂力が今の俺にはある。
結果、鋭い斬撃は槍の柄を切り裂き穂先を地面に落とした。
そのうえで、居合を終えた俺はすぐに武器の変更を選んだ。
技巧での戦いはもう終わりだ、ここからは力でごり押していく。
「ほう、そのように身の丈に合わぬ大剣を振り回すか」
「ご期待にそぐえなかったようで……」
「いやいや、そうは言っておらんよ。数多くの武人を見てきた、我の想定を軽々と超えていく者もな。その類と見て、決して油断せず相手をさせてもらおうぞ!」
「……これは厄介ですね、ですが行かせてもらいます──“ 波動斬 ウェーブスラッシュ ”!」
武技を発動する。
だが俺の場合、武技を使う際に機能する動きの補正は機能せず、むしろそこを完全に手動で行わなければならない。
その分自由性が存在し、システムが許容する範囲で武技の動きをなぞることができれば武技を正しく発動した際と同じだけの性能を発動することができる。
「これを、重ねて三回!」
「おおっ!?」
「貴方も似たスタイルでしょう? さあ、楽しみましょう!」
「あえて我と同じで……面白い、面白いではないか!!」
俺の行いに、『武尽』は頬が釣り上がるほどに喜んでくれた。
俺もやった甲斐があった、このままやればいけるかな?