脱獄実行 その22
脱獄実行 その22
武技モドキを何度もなぞる、それだけならば何回でも発動できる。
そんな裏技っぽいことをして、公式で似たことができる『武尽』に対抗していた。
「しかし、これは……くっ、長くは持ちそうにありませんね」
「我にはそれを行うための恩恵があるが、お主にはあるまい。いや、それ以前にまだまだ爪が甘い」
「……ええ、そうでしょうね」
互いに武技を連発し、動きが終わる直前で異なる武技を発動。
それを繋げることで、無駄なく攻撃を連発している。
まったくゼロにはならないようで、連続して同じ武技は使わない『武尽』。
だが一つでも武技を挟めばすぐに使えているので、ある意味無いに等しい。
なお、現状では攻撃系の武技に限定しての時間軽減と思われる。
防御も回避も武技を使っていないので不明だが、使わないからこそそう考えられた。
もちろん、それをブラフにした不意打ちも想定している。
……あと、それが可能だとほぼ不死みたいな戦法も取れてしまうので考えたくない。
「むぅ、もっと強力な武技は出せんのか」
「残念ですが、私の向き不向きは戦闘には合わないらしく。生産系であれば、満足のゆく結果になったでしょうが……」
「……そうか、であれば仕方あるまい。このまま続けていても、策を講じられるのみ──『武尽』の神髄、始めるとしようか」
「!?」
立て続けに放たれる武技の乱舞。
これまでは一つひとつ、別の武技だった。
それは今回も同じ……はずだったのに、明らかに違う何かが緊急回避を選ばせる。
「『武尽』、すなわち尽きること無き武。つまり、武技に果てが無くなる。加え、我の就く【武芸王】は己が得た武技をある制限付きで重ねることができる」
「ッ、っと、ほっ!」
「その制限が『武尽』により失われ、どこまでも重ねることができる。唯一の問題点である武器も、[ハギマル]が補う。これこそが我の流派──武尽流の神髄である!」
「──ッ!?」
武器を巧みに切り替え、武技を発動する際の体の挙動を強制的に調整していた。
回避すれば回避した方向へ、受けようとすれば避けられぬ隙間へ。
試してはいないが、特定の属性で防げばソレを無効化する一撃で。
相手に適した攻撃を、その場その場で用意する──それが『武尽』の戦闘スタイルか。
人の頭では難しい行いも、機人族の高い演算処理能力があれば可能だ。
瞬時に最適な武技を繋げ続ければ、半永久的に戦うことだってできる。
結果、大剣の腹で防ごうとした攻撃も、そのスレスレで避けられ体に直撃。
複数の状態異常まで同時に発現、一時的に体が動かなくなる。
「……これは、厄介、ですね」
「固い、か……ずいぶんと変わったものだ」
続けていた“孤独蟲毒”の影響で、能力値が上がっていたのが功を奏した。
自動的に万能薬が振りかけられ、体の縛りが解かれる。
とはいえ、避ける方法を思いつかないとまた同じことになるだろう。
今の動きはラーニングした……が、何度でも組み替えられる以上、また同じこと。
どうしたものか、毎度のことながら手詰まりな状態になってしまう。
──真っ当な戦いは、やっぱり俺には向いていないのかもな。