脱獄遂行 その01
脱獄遂行 その01
邪悪深殿 百層
星造迷宮、その最奥にして始点。
上下から入ることができる特殊な迷宮において、決して上層からでは入ることができない特殊な階層──それが百層。
そんな場所で一人、ある人物を待っていた女性が一人。
身を包むのは堅固な鎧、だがそれでいて輝くような絢爛さを秘めている。
腰に下げた剣や背に載せた鑓、握り締めた杖などその一つひとつが決して価値をつけることができないほどに、強い存在感を放つ武具を持つ彼女──『騎士王』は溜息を吐く。
「……消息不明、か。一枚上手だったか」
『────』
「星約は違えぬさ。ここに『生者』が訪れれば全力で討つ、それは変わらない。だがしかし、私から追いはせぬ。それは星々が認めた条文であろう?」
星敵となった『超越者』──否、元『超越者:生者』。
今では『超越生者』という名を持つ新たな星敵を討つべく、『騎士王』は呼ばれた。
冒険世界との星約に基づき、他の星々と協力を行う『騎士王』ではあるが、星約以上の行動は取らずただ最上層で待つのみ。
それに痺れを切らすように、ある星が直接『騎士王』に行動を要請するのだが──
「それは星としての意思か、それとも別の意志か?」
『──』
「ふっ、影響力というのは凄まじいものだ。まさか形はどうあれ、星にまで影響を及ぼすことができるのだからな」
『──、────』
苦言のような意思を伝えてくる星に、だからこそと隠す意識で思考する『騎士王』。
星に認められた選定者、『超越者』を含む逸脱者の中でも最上位の存在ゆえの権利。
たとえ相手が星であろうとも、隠し事をすることができる。
ゆえに思う、『生者』はどのようにして星の計略を欺いたのかと。
「……いや、だからこそ『生者』と言える」
『──』
「この現状こそ、『生者』が制御下に置かれていない面白さを伝えてくるだろう? 言われるがまま踊る人形より、こちらの方がとても喜劇だ」
とはいえ、情報からある程度のことは察することができた『騎士王』。
最後に『生者』が観測されたのは、七十九層──そこで魔物と行動を共にする姿。
侵略者──かつて『騎士王』が『生者』と共に討った寄生体、そして宇宙外の神が干渉した禍々しい魔物だったとその場に居た逸脱者たちが報告を上げていた。
(となると、また異なる層に……いや、位相に向かったか。やれやれ、私はいったいここでどれだけ待てばいいのだ)
星にも秘匿し、こっそりと展開している術式は効果を発している。
それを維持し続け、『騎士王』は遠くを見つめるのだった。