脱獄遂行 その03
脱獄遂行 その03
──“ 命燃やす灯火 アライボウィスプ ”。
命を糧とするその炎は、決してその犠牲を無為にはしないとんでもない性能を持つ。
燃料をくべればくべるほど、その炎は激しく周りを燃やしていく。
それはたとえ 超越種 スペリオルシリーズ や 災凶種 ディザスターシリーズ であろうと、ましてや逸脱者や最上位職であろうと。
残機を減らせばその分燃える、そしてそれは防御無視の固定ダメージで。
予め言っておくと、本来の[アライボウィスプ]の残機は無限に近いが無限ではない。
そちらの仕様を基にしているからこそ、ある意味セーフティが掛かっていたのだ。
だがそれを、文字通り無限の残機を持つ者が使えば?
ただでさえ制限が課せられなければ危険な能力を、制限無しで使える者が現れれば?
──その答えを、俺は自分の身で経験して知っている。
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??? ■■■■
唐突に連れてこられた真っ暗な空間で、一寸先すらも闇の中で光を灯す。
ただし、懐中電灯のような光はダメだったので──自分自身を燃やして。
「どうだ、あかるくなっただろう? ですねこれは」
かつて存在した風刺画を思い出しながら、そう呟く。
何も無かった空間に、今では特大の炎が生まれ俺の周りを照らしていた。
とはいえ、元より何も無かったのだ。
結局周囲を照らしても、あるのは純粋に黒い地面と果ての無い暗黒の空だけ。
「さて、周囲を照らした程度でどうにかなるとは思っていませんが……まあ、条件を満たすことは出来ました」
《仮定座標の定義完了──擬似転移を起動します》
「相対的な転移なら、これでできますね」
転移門や転送陣などは、絶対座標という固定された軸を基にして移動が行われる。
だが今回、俺が居る場所はどこか分かっておらず、かつ座標の特定もできなかった。
ではどうするか──転移の方式を、ほんの少し変えればいい。
普段の転移がきちんと場所を決めるものなら、俺が行ったのは自分から見た座標指定。
移動できる距離に制限は生まれるが、これならば視界内どこでも自由に転移可能だ。
そして今回の場合、副次的な産物も手に入れることができる。
《転移時の歪み、その観測に成功しました。座標特定に努めます》
「ええ、何とかなるといいのですが」
パッと切り替わる視界、だが当然のことながら多少移動した程度で光景は変わらない。
それでも俺は脱出する術を求め、ただひたすらに転移を繰り返す。
その軌跡をなぞっていくように、“命燃やす灯火”が辺りを照らしていく。
俺の活動範囲が広がれば広がるほど、範囲も光量もどんどん大きくなる。
それが意味することは──まだ明らかにはできない、布石があるというわけだな。