脱獄遂行 その07
脱獄遂行 その07
八十層の守護者は『覆魔殿』だった。
混戦とした状況の中、彼だけをピンポイントで狙うのは難しい──が、今の俺はエクリの体を使っているのでそれを活かすことに。
「──“ 影蹂満 カゲフミ ”、“ 天淵黒亡 エクリエンド ”」
靴を踏み鳴らし、自身の影を媒介とした身力吸収領域を展開。
そのうえで、空に黒い太陽を掲げて全体への防御無視攻撃を仕掛ける。
不意打ちも何もない、真っ向からの奇襲。
すでにその身で味わった星敵や、情報を把握している逸脱した連中の対応は速い。
だが、彼らが対処できているのは空に浮かぶ太陽のみ。
後者を公然の場で使うのは初めてで、未だ情報を完璧には把握されていない。
ゆえにこれらが生み出すシナジーもまた、未知の結果となるわけだ。
黒い太陽はエクリの力そのもの、それが生み出す陰は俺の下まで伸びている。
能力の名は『カゲフミ』、なのだ。
これまでは自ら歩を進め罠を張っていた、しかしその本質は他者の影を踏み締めることで発揮していたと思われる。
姿も知らぬ過去の固有種[カゲフミ]。
その名残が、残滓によりもう一つの発動条件である直接の影踏みによる条件を一気に満たしていく。
『っ……!?』
「これは……『生者』か!」
「遅い──“印影”」
この場の強者たちから身力を奪い取り、溜め込んだリソースで[カゲフミ]の能力を発動する──俺に気づき、周囲を光で照らしだした『覆魔殿』だが、その影だけは残る。
「さて、何が出来上がるでしょう?」
「っ……転移術式、そうはさせるか!」
そう、前回同様に『覆魔殿』を転移でどこかへ飛ばすことを目論んでいた。
影で何かを描ける“印影”、それで描いていたのは転移の術式だったのだ。
だが、これにもすぐ対処しようとしだすのが『覆魔殿』の面倒なところ。
影に全力で攻撃し出すは、自分自身も飛んだり空間属性の擬似生物を使うは大忙しだ。
「でも残念──“無影供”にします」
「チッ、ならばお前自身を!」
神々の干渉すら条件次第で無効化できるのが、“無影供”の凄いところ。
今回はそれを利用し、転移術式から逃げようとしていた『覆魔殿』を封じた。
そうしたら、今度は俺をどうにかしようと抵抗してくる『覆魔殿』。
加えて、周囲もだんだんと近づいてきており状況はかなり危うい。
「ですが、リソースはたっぷりありますよ。さて、全員で遊びましょう──“影鬼”!」
至る所、影から這い出てくる分身体。
この場の人数分だけ現れ、全員の相手をしてくれる──仲間外れは居ない、さあ存分に楽しんでくれよ。