脱獄遂行 その10
脱獄遂行 その10
武闘世界の【拳星】が仕掛けてきた!
エクリスペックの体を破壊するレベルの拳撃を相手取り、そのうえで時間内にここから脱出しなければならない七面倒な状況。
「やるだけやりますか──“人霊切替”」
「あぁ? 霞みやがったか? 面倒なんだよな、霊体って殴りづらいから」
「だからこそですよ──“万闇統一”」
闇を支配するエクリの能力を使い、闇──影を操り攻撃を仕掛ける。
それ自体が【拳星】を倒せるわけではないが、体勢を崩すぐらいの妨害は可能だ。
ゆえに直接ダメージに繋がる場所は狙わずに、足元や死角を狙う。
それらをコンパクトな動きで跳ね除け、近づいてくる姿を可能な限り観察していく。
《鑑定結果より、一切情報開示の無いアイテムは全部で四つ。 遺製具 レリック 、あるいは星具、神具級のアイテムで間違いないかと》
「……ずいぶんと貴重品を揃えてますね」
「おうよっ! やっぱり殴り甲斐がある相手はなかなかいねぇからな!」
つまり、サンドバックを探して遺製具を手にしているわけだ。
俺たちが特に問題としたのは、靴として着装している遺製具。
グリップの効果でもあるのか、しつこく攻撃を仕掛けてもブレないのだ。
職業能力の可能性もあるが、どちらにせよ厄介であることに変わりはない。
本来であれば、それらの攻略にまた時間を掛けねばならないのだろう。
……だがそれらをしている暇もない、早急な脱出が必要なのだ。
「──『ダイダラバッチ』」
「ハァ!?」
「『イッスンボウシ』」
「! 消えた……そこか!」
巨大化した俺が、一歩前に出す。
手を出される前にすぐに切り替え、今度は体を小さくする。
警戒は当然されていたし、気配を探られることも想定済みだ。
だからこそすぐに小さくなり、拳が届く時間を一瞬でも遅くした。
「──“ 空間移動 ムーブ ”」
「っ……くそが!」
「すみませんね、お先に失礼しますよ」
殴られる直前に転移陣に到達、足を届かせると俺を次の層へ飛ばしてくれる。
それとほぼ同時、守護者である『覆魔殿』が戻ってきた。
俺はここから脱出でき、他の連中は設定を切り替えない限り追いかけて来れない。
思いのほか上手くいったものだ、そうほくそ笑みこの場から消えるのだった。
◆ □ ◆ □ ◆
邪悪深殿 八十一層
再び戻ってきた神殿のような空間。
すぐに原付を用意し、ドローンを偵察に飛ばしながら迷宮内を駆けていく。
「そろそろ詰んだな……さて、なりふり構わずやらないと不味いか」
まだまだ保有する手札は多い……が、俺の周囲を考えると切れる手札は少なかった。
星敵なのに、かなり制限がある現状……今更ながら、何を以って星敵なんだろうな。