脱獄遂行 その13
脱獄遂行 その13
九十層で待ち受けていたのは、時間稼ぎ目的が半端ない迷宮だった。
守護者を探し、転送陣を探し、逸脱した連中から逃れなければならない。
「メカドラ、出番ですよ」
『ギャオ!』
呼び出すのは願望機が一体、龍の姿を持つメカドラだ。
メカトラと同じ願望機なのだが、異なる願いを注いだため能力もまったく違う。
「──武器化を、『機銃』をお願いします」
『ギャオオオ!』
機械仕掛けの龍だった姿は変形し、片手で持てるサイズの銃となる。
そこに装填するのは通常の弾丸ではない。
魔石、あるいは──
「──『極龍咆光:激流の死水』」
俺だけの[称号]、『死天』によって生成された死の因果を内包したアイテム。
メカドラは願いの力によって、それを何十何百倍にも増幅して解き放つことができる。
結果、龍を模した銃口から放たれるのは溢れんばかりの膨大な水。
当然、それらが向かう先は迷路の中──しばらくして、変化が起き始める。
「おおっ、派手に対応している人もいるようですね……」
爆発が起きたり地響きが鳴り響いたりと、至る所で行われる洪水への対処。
触れたらその瞬間、溺死……とはいかずともしばらく行動不可能になるだろう。
増幅しているのはあくまで規模だけで、強制的な死の因果に関しては逸脱した連中に通じるほどでは無かった。
一度全体に攻撃を行った以上、逸脱した連中が動き出したことが警鐘によって判明。
だからこそ、少々のクールタイムを挟み次弾の装填を行う。
「──『極龍咆光:凍死の氷晶』」
水の流れは途切れたが、すでに迷路中を覆う量が溢れ出ていた。
そして、そこに畳みかけるように放たれた氷の息吹──水が、瞬時に凍てついていく。
「これで良しと……どうですか?」
《水流に混ぜた発信機より、位置情報が送られております。旦那様の死亡レーダーと情報共有を行い、[マップ]を更新します》
「とりあえず、これで迷路の攻略自体はできますね。問題はだからと言って、ゴールがどこにあるのか分からないことですが」
《予測されるゴール地点、加えて守護者と思わしき者にマークを付けます》
本来使えない仕様だが、今は[マップ]のような画面を『SEBAS』が擬似的に表示してくれている状態だ。
そこに死亡レーダーが映した危険な存在の位置も同時に出し、守護者と思われる者が居る場所も異なる色で出してくれる。
「……よし、準備は万端です。あとは掘削用に──『インストール:エクスベイター』」
その手に顕現するのは鍬、それを使い死の氷を削っていく。
水を固めて逸脱した連中は封じた、時間稼ぎにしかならないが……それで充分だ。