脱獄遂行 その17
脱獄遂行 その17
ホワイトボードとペンを『隠者』に渡し、筆記での返事をもらった。
だが書かれているのは象形文字(?)のため、『プログレス』で意思を読むことに。
「──それでは、取引は成立ということでよろしいでしょうか?」
[■■■■■■(肯定)]
「ありがとうございます。では、先に品を準備いたしますね」
毎度のことながら、俺にできるのはアイテム作りぐらいだ。
蘇生薬や万能薬、加えてそれを仕舞っておくための『収納箱』を取り出す。
ほぼアイテムボックスみたいな代物で、盗難防止や時間停止も付いた優れものである。
違いはコンパクトさ、また特定の職業が無いと作るのが困難な点ぐらいだな。
それを床に置き、再び距離を取る。
ゆっくりとそこに近づくと、魔道具を使い危険性をしっかりと確認……それを何度か行い、ようやく手に取る『隠者』。
物によっては、登録者以外が触れた途端に中身をぶちまけて嫌がらせをするような仕込みがされている場合もあるからな。
[■■■、■■■■(確認、感謝)]
「いえ、こちらこそ。それでは──この砂時計の砂が自然と落ち切った時、元の場所に戻ります。スキルの発動に不備は起きないはずですので、そちらはお任せします」
文字の内容に意味は無く、そこから伝わってくる感情のみを頼りに返事を行う。
死なずとも、条件さえ整えばきちんと帰れるのが『孤闘の武台』の効果だ。
それを信じてもらうためにかなりの時間を要したが、まあ必要経費ということで。
──こちらに来て三十分、それが交渉諸々に掛けた時間だった。
◆ □ ◆ □ ◆
邪悪深殿 九十層
三十分という時の長さは、人によって速いか遅いかの捉え方が異なるだろう。
……少なくとも、逸脱した連中にとっては短いものだったようで。
「──『ポイントシャッフル』」
俺が戻ってきて最初に見たのは、俺を見つけて即座に攻撃を行う誰か。
すでに辺りの氷は排除されており、死の警鐘がガンガン鳴っていた。
詳細を把握している暇など無い、ゆえに仕込みをすぐさま作動させる。
インストール済みだった『ポイントシャッフル』、そしてその派生である能力を。
地面に付いた足を擦り付け、罠として用意していた“トラップシャッフル”を起動。
座標は予測していた次の転送陣、攻撃を躱し着いた場所は──氷漬けだった。
「まあ、そうですよね──解除」
時間稼ぎの一環だったのかもしれない。
氷をわざわざ掘削し、部分的な解除などをしていなかったわけだし。
だが答えはシンプルに、それができない全体解除限定だったからだ。
もう全員が氷から抜け出している現状で、維持し続けている必要も無いわけで。
転送陣が在ることは確認済み、氷が消える光景はこの場に配置されていたヤツにもすぐ気づかれた──時間との勝負、その弐だ。