脱獄遂行 その18
脱獄遂行 その18
交渉の末、『隠者』より先にこちらへ戻ってきた俺。
結果的に守護者は迷宮内から消え、転送陣が解放されている。
当然、交渉中に氷漬けから脱出していた逸脱した連中。
帰還地点から転送陣までは転移で来れた、あとは乗るだけだ。
(とはいえ、それが難しいんだけどな……)
毎度のことながら起きる死の危険、それにより職業能力が起動して思考が加速する。
すでに彼らは俺の転移に気づき、転送陣への着地を阻むべく動いていた。
レベルであれば勝ろうと、圧倒的に劣っている俺の敏捷力。
本気の彼らからすれば、俺など止まっているように思えるに違いない。
「──“オールストップ”」
『!!』
だからこそ、俺は手にしていた懐中時計のスイッチを押す。
時間そのものを止める、そんな超常的な能力こそが『ストップウォッチ』の能力。
ある休人の飽くなき渇望が、そんな極致へと至らせた。
……まあ、まだまだ当人の渇望を叶えるのは難しいようだが。
「さて、急がないと……」
圧倒的なレベル差で発動対象には入れられるのだが、抵抗力もまた尋常ではない彼らに時間停止はさして通用しない──今ももがくように動き、こちらへ迫っている。
対する俺は体の束縛は無いものの、それでも時間を掛けてゆっくり前進していた。
あらゆるモノを停止対象としたとき、空気もまたその中に含まれる。
呼吸の方は死に戻りを繰り返せば不要となるので構わないのだが、単純に空気自体が重みを持って俺の移動を阻んでくるのだ。
「それでも時間を掛ければ……間に合いましたか」
水の中を泳ぐように、空気を掻き分けて転送陣の下へ。
すぐ後ろには見たことの無い、だが俺を殺しに来た誰かが居るが……振り返らない。
「転送陣を対象外に設定──それでは、ごきげんよう」
本来の時間の流れを取り戻した転送陣は、正しく起動し俺を次の階層へ連れていく。
そしてそれと同時、砂時計は条件を満たしたことで勝手に落ち切る。
前回の階層同様に、守護者が戻ってきたことで転送陣は使えなくなるわけだ。
……同じ手ではあるが、何とか通用してくれて良かったよ。
◆ □ ◆ □ ◆
邪悪深殿 九十一層
幸いにも、次の階層から最後の階層までの連続ボスラッシュ……という地獄のような展開は避けられたようだ。
《おそらく、リソースの問題かと》
「騙し騙しも限界だったってことか?」
《──あるいは、最後の階層にすべてを注いでいる可能性も》
「……あっ、そっちですね(察し)」
今の今までまったく出ていない、冒険世界最高の存在。
──最終層で待つラスボス、『騎士王』は間違いなくそこに居るからな。