脱獄遂行 その30
脱獄遂行 その30
邪悪深殿 表層『監極の扉』
「……ここは」
心臓を刳り貫かれようと、ポーションを掛けるだけで蘇る星敵『超越生者』こと俺。
だが復活するだけで勝てるわけではない、そんな俺を『騎士王』は転移で飛ばした。
「──ここは我らが戦った百層のその上、地上から迷宮に入った際に訪れる場所だ」
「! つまり、ここが出口!」
「正しくはその通路だ。この場所に限り、外の世界とも中の迷宮とも隔てりが存在している。その理由は分かるか?」
「収容者の脱出阻止、それと破壊による下層への移動も防ぐためですかね?」
迷宮への収容プロセス、休人の場合は死んだら直送もとい直葬だが原人は違う。
星敵レベルは俺と同じく転送だが、そうではない場合基本的に運ばれてくるらしい。
滅亡世界へまず来て、それから迷宮へ。
その後ここを経由して、というかここから直接下の街へ飛ばされる。
「──あの祭壇、あそこから一番下まで飛ばすのですね」
「そうだ。後に貴公も使うことになる……と言いたいところだが、貴公の場合はそれを利用しかねん。ゆえに機能は停止中だ」
「………………そうですか。私自身が使われずに済んで幸いです」
何だかんだ、敵を嵌めて突破することが多かったので少々痛い。
いっそのこと『騎士王』を飛ばせれば、というのは短い付き合いでもバレるようだ。
「この場であれば、本気を出せると……それはつまり、そちらを?」
「剣は使わん。今、この場は外界とは異なる場所だ。冒険世界で無いうえ、認可も届かぬこの場ではな」
「……」
「言っておくが、【救星者】のような限られた存在だけなのだ。星具の能力を解放し、自身の担当する星々以外で使えるのは」
いかに最高の『超越者』とて、その証を授けた星以外では使えないと。
俺は俺でアイスプルの出身だが、先ほど名が出た【救星者】は[称号]ではなく職業。
異なる理、仕組み、システム。
そういった何らかの法則があるのだろう。
ともあれ、星剣で『円卓の騎士』が集まってのリンチが無いだけまだマシだな。
「では、この場で時間を稼がれますか?」
「それも良い。だが、すでに格付けは済ませてある──我は全員を圧倒し、百層とこの空間を占領したのだ」
「…………なぜ、そのようなことを?」
「決まっている。だが、今は話すつもりは無い。全力を出せ、我にそれを魅せよ」
よく分からないが、どうしても『騎士王』は一対一で戦いたいようだ。
とはいえ、俺にできることの大半はすでにやっている。
これ以上いったい、何を求めるのか。
それが分からない、だが何もしなければ脱獄は決してできない。
「──確認します、何をしても私は許されるのでしょうか?」
「何の心配だ? それはここへの影響か、それとも──我への心配だ。前者は無用、そして後者は不要。殺す気で……世界を滅ぼすつもりで挑もうと、我には敵うまい」
「……分かりました」
使うつもりは無かった、それは相手が誰であれ何であれ。
ただの娯楽、余興、成し得る力を持つ者がただできるからとやってみただけの産物。
日の目を見せるつもりなど無かった。
だが、それでも使えと言うのならば──かつてアイスプルの迷宮を、亜空間を丸ごと使い潰した兵器を使おうか。