第二の箱庭 その02
第二の箱庭 その02
やる気のない【仙王】、彼女の書類仕事を手伝うことに。
なお、契約書で不都合な情報は漏らさないようにするつもりだったが──
「あー、いいよいいよ別に。それより、これとこれもよろしくねー」
「…… 王 ワン 、お前というヤツは」
「そもそも、本当にダメなヤツはローが入れてないでしょう? 職業として【仙王】に就いているからって、結局あたしが子供なことに変わりないもんね」
彼女はとても頭がいい、ゆえに自分に求められる振る舞いを理解していた。
全部が演技というわけではないだろう、だがわざとそうしている点もある。
「それよりほら、ツクルこれ見てよ。ちょうどツクルの行く場所の情報だよ?」
「これは……」
「休人たちが集まっているだって。数が数だけに、帝国の方も苦労しているみたいだね」
仙人たちの住む仙郷は、近隣国である帝国と緊張状態にある。
俺もかつて、彼らの侵攻を阻止するために戦ったことがあった。
そんな状況なので、仙人たちは仙術を用いて帝国を監視しているのだが……仙郷と帝国の間にある、黄龍河での出来事もしっかり確認して上に報告していたようだ。
どうやら渡された資料によると、大規模な拠点を作って陣取っているらしい。
それはかつて、古代の箱庭で休人たちが行おうとしたこと……あの時は排除したがな。
「ツクル、これをどうするつもり?」
「……どうしましょうかね。正直なところ、これは皆さんの防壁にもなります。彼らの目的はあくまで、私と同じもの。あの場から動くことはないでしょう」
「だが、問題があるのだろう?」
「ええ、『闘仙』さん。彼らは報酬に素直ですので。仙人の存在、迷宮の存在、そしてここでしか得られないアイテム……帝国に与する者も現れるでしょう」
そして、そうなったときに黄龍河にある拠点は非常に厄介なものとなる。
休人たちが居るということは、セーブ石も配置するつもりだろう。
何度でもそこからやり直し、目的を果たすべく彼らは挑む。
仙人の街へ、帝国へ、死してなお彼らは自らの益を満たすために動くだろう。
「まあ、我々のスタンスは変わらん。仙人とは世捨て人の集まりだ、休人たちが武力でこちらを制するのならば──法も掟も忘れ、ただ排除するだけだろう」
「……そう、ですか」
「んー? 気に無くていいと思うよー。別にここじゃなきゃダメってわけでもないし。本当に危ない、それこそ『騎士王』さんレベルの人が来るなら、みんなササッとここから居なくなるだろうし」
仙人たちは霞を──正しくは霞などの自然に内包される仙丹があれば生きていける。
たまたまここに、それが多いからこそ彼らは仙郷を造り上げた。
だが、そのメリットを超えるレベルのデメリットが生じたならば。
──休人たちが力を得たその時、ここには誰も居なくなるのかもしれないな。