第二の箱庭 その16
第二の箱庭 その16
狼たちへの支援として、無数の花々を咲かせてみた。
支援──『プログレス:ブルームセンス』により、『魔動機盤』の仕組みが一部判明。
機械を組み込んだ装置から生み出される攻撃、しかしそれは純粋な魔力の産物。
まだまだ謎が多いことが分かる、つまり分からないと分かったわけだ。
「反撃といきましょうか──開始」
意味も無く指を鳴らすと同時に、狼たちが動くようにプログラミング。
あたかも、それが必要であるかに見せて誘導を繰り返す。
失敗はしても一切困らないので、やるだけやってみようの精神だ。
同時に、狼たちに咲かせている花の色を変更──そのすべてが緑色に染まる。
「魔術式構築──“千変宝珠・万色”」
そして、俺も色とりどりの魔力球を浮かべて周囲に展開していく。
属性を秘めた魔力──そこから狼たちが出現し、空を翔けパトカーを襲う。
「自身の魔力からでも、狼を生み出すことはできるんですよね……さて、そろそろ終わりといきましょうか」
魔力が生み出す属性を高位のモノへ、加えて狼の一匹一匹に注ぐ経験値を増やす。
これまでよりも強力な狼たちが現れて、弾丸を受けようと消えることなく進んでいく。
──そして、それは前方だけでなく遠回りで近づいていたお巡りさんたちにも。
『なっ、さっきまでと違──ぐぁあああ!』『くそっ、来るな! 来るなぁあ!』『ふざけんなよ、情報と違うじゃないか!』
襲われるお巡りさんたちの悲鳴が、傍聴する無線越しに聞こえてくる。
それを聞き、その声が途絶えるまで容赦なく狼による攻撃を行っていく。
「──そして、それもやがて潰えると」
しばらくして、静かになった辺り。
俺の体は仄かな燐光を放ち、ただ立ち尽くすのみ──うん、死んでいるな。
「生き残りが……ではなく、これはシンプルに別の者ですね」
《旦那様、あちらの方向をご覧ください》
「あちら……いえ、まったく見えませんね」
《衣装からして、おそらく休人が観測しているようです》
視られるだけで死んでしまう、そんな虚弱な俺だからできる文字通り身を削った索敵。
それに引っかかった存在は、指示された方角の遥か先でこちらを見ているようだ。
《旦那様、いかがなさいますか?》
「とりあえずは様子見ですね。ドローンを飛ばすだけ飛ばして、それ以上はしません。ここまでやれば、そもそもの対応も変わるかもしれませんし……犯罪者として、どこまでやるかも考えものですね」
さすがにやり過ぎたとは思う。
だが、後悔はしていない──こうして第二の箱庭に訪れた俺は、わずか半日足らずで犯罪者になったのだった。