第二の箱庭 その19
第二の箱庭 その19
休人相手に裏でこっそり、魔動機盤に手を加える仕事を始めた。
彼らが手に入れられる魔動機盤は、あまり質が高くないからな。
「──では、始めますね」
席に着き、キーボードを叩く。
魔動機盤は名称から分かる通り、機械の要素を持っている。
そのため、本来行うプログラムの書き換えもこうした形でやっていく。
……まあ、そちらはきちんと魔動機盤で行われているのだがな。
俺の場合、『SEBAS』が干渉するために魔動機盤ではなく魔道具を使用している。
だが、性能は折り紙付き──解析はほぼ済ませてあった。
「す、凄い……! プレイヤーでここまでできる人はめったに居ないのに……!」
曰く、プログラミング技術があればある程度手を加えることはできるとのこと。
…………そして俺は、そういった知識は持ち合わせていない。
なのでキーボードを叩いていても、俺の入力はまったく影響を及ぼしていない。
次々と浮かんでは消える文字の羅列、それは『SEBAS』が遠隔で行っているもの。
「なるほど……これは」
「な、なんですか?」
「いえ。ええ、プログラムの方ですが……少し改良すれば、余裕が空きますね。従来品のまま枠はそのままに、出力の向上などが見込めますよ」
「…………どうしよう」
俺が行っているのは、改良ではなく改造。
枠を増やすのは本来法に引っ掛かり、取り締まりに合うのだ。
だからこそ、高性能を求める休人たちは俺の改造屋に来るのだが……当然、一度それを行なえば正規品として扱われず、保証が効かなくなる……世知辛いな、まったく。
なので俺としては、枠はそのままにプログラムの方を改良することを進めた。
内容の方も確認させてもらったが、そちらもどうにかなりそうなんだよな。
「いくつか……こことこれ、それにこれですね。使用が基本的に同時ですので、組み合わせてしまえば枠が空きますよ」
「え゛っ!? そ、そんなことが……!?」
「値は少々張りますが、可能ですよ」
「…………でしたら、枠を増やしてプログラムの改良をお願いしても? お金ならどうにかします……もっと、できることを増やしたいんです」
俺は……すっと意識を切り替える。
結局のところ、依頼人の注文に応えるのが今の俺の仕事だ──何より、お金さえどうにかしてくれればいいからな。
「分かりました。事前に確認しているでしょうが、再度。こちらの改造は、確実に法に反した行いです。それでもよろしいですか?」
「はい、お願いします!」
「畏まりました──では、プログラムの接続と枠の追加を始めます」
──と、いっさい何もしていないキーボードを叩くだけの無能が 騙る ・・ 。
そして数十分後、ターン! と一際大きい音を立てて作業の終わりを示した。