第二の箱庭 その27
第二の箱庭 その27
若い魔工機士を誘い込み、結界で覆い周囲から隔離した。
しばらくは俺と二人きり、情報収集の相手になってもらう。
「まあ、簡単に吐いてくれるとも思ってはいません」
「…………」
「ええ、だんまりこそが正解。ですが、わざわざプログラムを使うまでもありません。こういった時の正解は──自白剤!」
穴──[インベントリ]から取り出した、無色透明な液体。
瓶の蓋を開けてそれをチラつかせれば、相手の警戒心は一層高まる。
「飲めばコロッと、誰でも聞かれた情報を吐きたくなる優れものですよ。尋問の際に御一つ、いかがですか?」
「…………」
「ああ、つまらないですね。ここは『なら、貴様の尋問にでも使ってやるよ』とでも応えていただきたかったのですが……仕方ありませんね。力尽くで、飲んでいただきますよ」
「!」
現在の俺は、結界の補助を受けて最大の効率で戦闘を行っていた。
紙一重、神業といった超高等技術であろうと、肉体の限界を超えて強制的に成功する。
彼は抵抗するように、自らの警棒に取り付けられた魔動機盤のパネルを操作──プログラムが実行され、激しく雷が轟くスタンロッドを作り上げた。
「!」
「おっと、片手が空いていませんね……それでしたら、もう片方の手だけで相手をさせていただきましょう」
「舐めやがって!」
「舐めてはいませんよ……ただ、それで充分ということだけ」
才能はあるのだろう、武器の力に頼り切ることなく、体術も交えて攻撃してくる。
だが悲しいかな、瓶の中身を揺らがせることなく体が勝手に対処していた。
途中、警棒を地面に突き刺し電流を迸らせるなど、カッコいいこともしていたが詳細は省略──重要なのは、このお遊びが始まってそれなりに時間が経った後のことだ。
「…………ぐっ」
「おや、注意力が散漫としていますよ。何か気になることが、いえ私にお話ししたいことでもございますか?」
「……貴様、まさか……!」
「ええ、気づかれたようで。こちらの自白剤ですが──空気に触れさせ、散布するタイプですよ」
自白剤の入った試験管を引っ繰り返すが、そこから流れ出る物は何もない。
すでに空気によって揮発し、結界の内部に溢れ返っているのだ。
俺は体を動かす関係で、常時結界を展開しているような状態。
だが、彼の場合──この戦いで激しく消耗し、呼吸もしっかりとしていた。
「──ッ!」
「遅い。これがベテランであれば、最悪気絶でも自害でもしたでしょうが……貴方は判断に迷いが生じた。それが、このような結果を招いたのです」
「…………」
「“術式鑑破”っと……さて、少しの間語らいでもしましょうか」
意識がぼんやりとなり、目が虚ろとなった彼はこの後、俺の質問に自分の持つ知識の限り応えてくれる──たとえそれが、話してはいけない内容であっても。