第二の箱庭 その28
第二の箱庭 その28
自白剤を気体として散布し、情報を吐かせることに。
ブラフで液体をチラつかせれば、経験が少ない若者はあっさりと引っかかった。
「──これぐらいですね。よいしょっと」
「あがっ……!」
「気絶させるのも慈悲というもの……あれ以上放置しておくと、危ういところでした」
尋も……質疑応答を終えた俺は、回答者である若い魔工機士を昏倒させる。
自白剤は少々効き目が強く、長時間その効果に晒されていると危険なのだ。
……まあ、危険な素材は一切使っていない極めてクリーンかつホワイトな代物だけど。
少々そのホワイトさが、脳に深刻な影響を与える懸念があるので意識を遮断させた。
「休人たちへの対応に差し向けられた、固有のプログラム……いえ、魔動でしたか。固有魔動の使い手については、彼ら自身にお任せするとしましょう」
休人との会話では、分かりやすかったのでプログラムと伝えていたが、箱庭の住民たちはプログラムで動く魔力の現象を『魔動』と呼んでいる。
だが、俺たちからすると魔術やら魔法やら魔装(アイテム経由の魔力現象)やらと、種類が多くてげんなりするので、シンプルにプログラムと言う場合が多い。
そんな魔動の中でも、極めて貴重な唯一無二の魔動を扱える精鋭の魔工機士。
その強い連中の大半が、管理者の居る場所に向かう休人たちを待ち受けているそうだ。
まあ、彼らの詳細については若い魔工機士も伝聞によるものしか持っていなかった。
これから俺自身が相手をするわけでもないし、必要ならもっときちんと調べよう。
「ですが、今は別の案件ですね──結界を解除してください」
《畏まりました》
「擬似仙丹接続──仙術“煙霧”発動」
ノリノリで告げるのは、仙人の王様に直接倣った仙術。
才なき体の代わりに魔道具を使い、溜め込まれた仙丹を介し起動。
生み出されるのは真っ白な煙。
本来は塵などで構築されるものだが、仙術“煙霧”はそのすべてが天然の自然素材で作られたナチュラルな代物です(適当)。
素材はともかく、結界が解除されると同時にどこまでも煙は広がっていく。
自然の力を帯びているゆえ、魔力と同様の対応が取れない場合がある。
「見えないでしょうね、今の皆さんには。風で吹き飛ばすのも愚策だとお伝えしておきますよ。それでは、またいつか」
『──!』
《転移装置作動──転移します》
彼らの返答は聞かず、『SEBAS』が鞘の転移装置を使い脱出を図る。
結果、ベテランであれど特殊な魔動を扱えない魔工機士は、俺を取り逃がすのだった。
◆ □ ◆ □ ◆
逃亡に成功した俺は、ある場所を目指し移動を開始していた。
それはかつて、箱庭を訪れた際に来た──居た場所。
「ターミナル、また戻ってきましたね」
休人たちの大騒動で、少々警備が手薄なこの場所。
再びそこを訪れた俺は、誰に咎められるでもなく内部へ侵入する。
毎度お馴染み『インビジブルクローク』、加えて“ 孤絶ノ衣 ウトロナルマトイ ”に透明薬。
念には念を入れて向かう先、それはこの箱庭にとって重要なある場所だった。