機械箱庭 その07
機械箱庭 その07
事象干渉の次は空間干渉、後者の方がそれに特化しているからこそそちらも面倒臭い。
おまけにそれぞれの呼び合いも総隊長と副官、どちらも実力者間違いなしである。
「やはり、逃げるに限りますね!」
足に履いた『スピードブースター』の恩恵で、敏捷力が遥かに高まっている現状。
厄介過ぎる固有魔動、加えて侵入者に対する守護者の補正に俺は逃走を選ぶ。
「──“ 空間歪曲 ディストーション ”」
体系化された魔力運用システム──魔法を使い、空間への干渉を実行。
展開先は自身の周囲、実行することで俺の視界がぐにゃりと歪んでいく。
だが、それは俺の感覚が狂ったわけではなく、世界の方が狂っただけ──空間に歪な曲がりが生まれているのだ。
「────!」
「────!」
なお、空間の歪みの影響で収音機能は著しく低下してしまっている。
そりゃあ場そのものがおかしくなっているのだ、空気の振動なんて当然届かない。
まあ、それでも通せるモノがあるので、視界は歪んでいるだけに留まっている。
そういったモノを利用し、『SEBAS』との連絡を可能にしている。
《仮称『空隙』の魔弾の着弾を確認──空間属性を帯び、その影響と思われます》
「そりゃあいい……このまま行けるか?」
《難しいでしょう──『事斬』、動きます》
「──『事斬』!」
空間の歪みを断たれ、再び空気が流れることで言葉が伝わってきた。
だがそれを気にする暇はなく、飛んできた斬撃を──合間を縫い撃たれた弾丸を回避!
「外しましたか……総隊長、お下がりください。長くは持ちません」
「あいよ、了解!」
先ほど、『事斬』は“影鬼”を一太刀で切り伏せていたが、それを警戒していたので今回の“空間歪曲”はすぐに再構築した。
空間属性使いの感覚で、それを読み取ったであろう『空隙』使いが総隊長──『事斬』使いを下がらせる。
一方の俺は変わらず走り続けるのみ。
当てもなく──ではない、すべては先んじて『SEBAS』が計画し、定められていた方針に従っている。
「おっと、さすがにずっと走っていると人と接触もするよな……このまま押し通らせてもらおうか」
「────!」
「知らん──“ 時間加速 クイック ”」
空間への干渉と同じくらい難しい、時間への干渉……ただし、進める方面限定。
遡る方面はより難しく、条件付けでもしないと大変だが……今は省く。
その魔法により、肉体の時間を加速。
敏捷力とは関係なく、肉体そのものの稼働速度を早めることで結果的に加速するという強引な理屈。
だが、外部から見れば結果は同じ。
これまで以上の速度で走り抜ける俺を、待ち構えていた魔工機士たちは止められず──目的地まであと少し。