機械箱庭 その08
機械箱庭 その08
逃げて逃げて逃げ続けて。
空間を捻じ曲げ、時間を加速させ……高等な魔法を使おうとも、やっていることは単に逃避だった。
それでも、その行いは目的のために。
道行く魔工機士たちを横切り、向かう先にあるのは──
「見えましたね」
そこはターミナルの最上階……の一つ下。
一番上は特別な階で、めったに人が入ることは無い場所。
そして何より、そこへ向かうための道が一つ下の階にしか無いのだ。
他よりも堅固な材質で、何より魔工機士たちに阻まれる扉に──駆ける。
「“フルドライブ”+“ドライブキック”」
これまで隠していた、短期間の超加速。
更なる速度向上により、もはや雷の如き速さを得た俺──その勢いのままに、扉を強く蹴りつけた。
「ゴール、ですね……いろんな意味で」
「だ、誰だ貴様は!」
「お、お前は……!」
「ひぃふぅみぃ……ええ、問題ないようで」
どちらも最後の言葉は小さな呟きで。
中には緊急時でも変わらず席に着くこの箱庭のお偉い様方、そして上階へと向かうための仕掛けが一つ。
隠されているモノも、エクリの優れた眼が見逃さない。
擬似スキル看破、それを名乗るに相応しい機構が組み込まれているのだ。
「さて、皆さん。少なくとも私は、お初にお目にかかります。ツクルと申します。短い間ではありますが、どうぞよろしくお願いします──“万闇統一”」
『────ッ!!』
「とは言っても、皆様のお言葉を拝謁するのはどうにも身の丈に合わないことだと思いますので。どうかそのままで……えっと、それぞれのボタンを押すっと」
『ッ!?』
上階への入り口は、彼らが座る席にそれぞれ設置されたボタンを押すこと。
生体認証式なのでただ押すだけでは意味が無いものの、彼らを操ればそれも容易い。
認証はあっさりと通り、上階への道が生まれる──それは隠し扉。
上へと続く道が現れ、俺はそこへゆっくりと向かっていく……が途中で立ち止まる。
「おっと、一つ言い忘れていたことが。私はこれまで歩く場所すべてに仕掛けを施してきました……ええ、見ての通りそこにはすべて暗い影が落ちていますね。領土を広げ、そこから力を得る。それが私の力ですよ」
実際には 遺製具 レリック の効果なのだが、まあ装備者の力と言っても過言では無かろう。
わざわざそれを話す必要性は無い、だがロマンはそこにある。
「“影鬼”、これがまたこのターミナルの至る所に現れます。先ほどまでよりも少々厄介にしましたので、そう簡単には消されはしませんよ──総隊長様、副長様。追いかけてきたいならばどうぞ? できるものならね」
空間を渡り、ようやく追いついた彼らに最後に言い残す。
それと同時に影を操作、これまでよりも強力な“影鬼”を生み出し守護を行わせる。
しばらくして戦闘音が響くが、俺の下には誰も現れない──それを確認し、上階へ歩を進めていった。