機械箱庭 その12
機械箱庭 その12
人の業は箱庭にとって神に等しい管理者すらも手中に収めようとしていた。
魔動機盤を用いない機械を用い、少しずつ分からないレベルで干渉していたようだ。
「『SEBAS』」
《はい、解析を実行します。修正前をバックアップ、修正後との比較及び上書きへと移行します》
前回同様、どんな端子でも差せるケーブルで『SEBAS』とのリンクを形成。
高度なプログラムをその場で作り上げ、機械の先に居るであろう管理者にアクセス。
そこから問題となっている術式を解析、その解消をしてくれている。
ただし、これには時間が掛かる……俺はそれを稼ぐのがお役目だ。
扉の前に立つ俺。
闇が切り払われる感覚で、再び魔工機士たちがここに迫ってきているのが分かる──だからこそ、これを行う。
「“アップ・ロード:ストップウォッチ”、“神持祈祷:ストップウォッチ”」
両手に生成される懐中時計。
あえて同じ『プログレス』を落とし込み、行うのは──
「──“オールストップ”」
ピタリ、と時が停まった。
ただし、背後で行われている機械へのハッキングは変わらない速度で進んでおり、時間への干渉が行われていないことが分かる。
何でもかんでも自分以外は停めてしまうこの能力だが、発動範囲はある程度絞れた。
それを利用して、ギリギリ『SEBAS』の邪魔にならない場所で扉の先ごと行使。
空間に干渉したり事象そのものに干渉してくる魔工機士たちなので、これもまた時間稼ぎにしかならないが──少しでも、たしかに近づいてくる速度は低下している。
《修正前のデータ、サルベージ完了。比較により欠落部分の補填に成功。これより、データの書き換えを開始します》
脳裏に響くその声に、この行いに意味があることを理解した。
だが、魔工機士たちも着実にこの部屋に近づきつつある。
「──“オールストップ”」
それでも、片方の懐中時計が効果を切らしたその瞬間に、もう一つの懐中時計を使う。
その間はほんの一瞬、しかしベテランの魔工機士たちにはそれで充分だったようで。
「──『事斬』!」
「──『空隙』」
事象を切り裂き、空間を渡り、二人組の魔工機士が再びこの場に。
総隊長と副官、彼らの持つ固有魔動は非常に厄介だ。
……王道なら、ここで最後の防衛を行うのが定番なのかもしれない。
しかし、俺がわざわざそれをする必要は、無いよな?
「“印影”──“ 空間退出 イグジット ”」
「っ、またかよ!?」
「……間に合いませんね」
影で描いた魔法陣、それは臨界ギリギリで留めておいたもの。
どうせ来るだろう、と予期していたからこその仕込み──間に合わせないさ。
「──“オールストップ”」
あることをして ・・・・・・・ 、クールタイムを回復させた一つ目の懐中時計を再使用。
対象は踵より少し上、体を動かせなくなった彼らは魔法陣に呑み込まれ──消える。
なお、転移先は扉を出てすぐの場所。
ただし、一段以上は踏み越えているわけなので──うん、振り出しから頑張ってくれ。