機械箱庭 その15
機械箱庭 その15
箱庭の解放、それは良くも悪くも箱庭の住民たちに影響を及ぼす。
その説明を、ちょうど俺を追いかけてきていた魔工機士の二人に説明していた。
「これがねぇ……たしかに、既存のヤツとは比べ物にはならなさそうだな」
「休人たちが持っていた物よりも、質が高そうですね。こちらはどこで?」
「休人にも派閥や組織はございますので。これは私が所属する組織で作られる、最上級のポーションですね。店での購入などはできないので、限られた者にのみ現物支給といった形で配布されます」
「そうですか──って総隊長、何を!?」
突然総隊長は自らの剣『事斬』で腕を切り落とした──腕の断面から血は出ておらず、切り落とされた腕から火花が散った。
どうやら義肢だったようで、それがどうなるかを試したらしい。
結果は成功──何も無い場所から、突如として腕が生えた。
「うおっ、気持ち悪い……けどまあ、凄い性能なのは本当みたいだな」
「貴方という人は……ですが、たしかにこれは凄い。総隊長の腕は、固有魔動で切り落とされたため再生不可能だったはず」
「ははっ、悪い悪い。これは経費に付けておいてくれ。なあ、これいくらだ?」
「…………こちらですね」
副官は再生に驚いていたようだが、俺は俺で義肢で振るわれていた剣に苦戦していたことに少しだけショックを受けていたりする。
純正品を売る予定は無かったので、渡した資料には書いていなかった。
代わりに、即席で紙にその額を書くと……相手方は青褪めた表情を浮かべる。
「これは、経費ではなく自費ですね」
「じ、慈悲は──」
「はっ?」
「……あっ、何でもない、です」
上手い洒落だと思ったが、副官には通用しなかったようだ……気を付けよう。
まあ、こちらも商売人なのでその辺を配慮する気は無いけどな。
◆ □ ◆ □ ◆
そこからは質疑応答が続いた。
頑張って登って来ていた魔工機士たちは、合流した後すぐに現状の確認を行わせるために地上へ駆り出された……可哀そうに。
そしてしばらくして、魔工機士二人も移動していった。
残された俺もまた、階段を一歩踏み外して振り出しに戻り、ターミナルを移動する。
《旦那様、管理者には会わずともよろしいのでしょうか?》
「あー、うん。休人たちで頑張って解放したわけだし、古代の箱庭みたいに放置したら噴火で崩壊って展開にもならないだろう。だからそのままにしておいて、休人たちがどう動くのかを探ることにした」
俺と同じく【救星者】……はさすがに無理かもしれないが、箱庭の管理者としての権限にアクセスできるような職業に、いつかは休人たちが就くかもしれない。
そんな時、もし現存するすべての箱庭が俺のモノになっていたら?
……そりゃあ揉める、大いに揉めるだろうからソレは止めておいた。
──後の予定? うん、有耶無耶にしておいたから逃げるだけだ。
司法取引は蘇生薬で済ませたので、さっさとゲートを潜り箱庭を出ていくのだった。