第一回職業解放後篇 その06
第一回職業解放後篇 その06
≪ななっ、なんということだ! 一年前、小人族によって腹を突かれて以来、万全の策で守られているはずの『深淵ノ使イ』が、今再び体の中から攻撃されている!≫
体内からの攻撃、何やら耐性やらを強化されていたようだが、死の毒液と液体を改造する『プログレス』の派生能力によって、それらは無意味と化し暴れ始めた。
死ぬまでに掛かる時間は三分ほど。
なお、これは体内で行う延命込みだ……素材の回収とかもしたいので、外部の賭け事に合わせた時間の長さである。
≪抵抗空しく、深淵ノ使イがダウン! そしてそのまま死亡を──おっと、粒子の中から人影が……これはまさか、そのまさかだ!≫
迷宮は基本的に死体を残さず、粒子と化してリソースに還元する仕様だ。
そのため、こういった無茶をした場合だろうと、消化される前なら生き残れる。
話に出た前の成功者も、そういった確信があったのだろう。
まあ、正規のお客様ならきちんと保険が付いているはずだけど。
「──さて、お楽しみいただけましたかね」
《皆様、旦那様の勝利、また耐久の末の結果に落胆しておりますね……このように、相応の額を賭けたにも関わらず、儲けが出ず当たられる方も……》
「気持ちは分かりますが……まあ、貰える物は貰っておきますけど」
怒りに任せて物を投げてくる観客も。
だが俺はそれを結界で包んでもらい、何かレアなアイテムが無いかチェック……さすがに魔物の素材を投げるヤツは居なかったな。
それでも、ポーションの空き瓶やら船内で売られたか配られていた飲食物の入れ物などが届けられ、そこから取れる成分からいろいろと得られるモノがあるんだとか。
「喜んでいる方は、いちおういますが……」
《彼らはいわゆる博打好きですね。純粋に旦那様が勝利する、そう確信しての賭けでは無かったようです》
「……まあ、いいですけど」
一定の人数が参加する賭け事で、大穴を充てることが条件の職業も存在はする。
純粋な運のみで、ということではなく予想しての賭けは誰もしなかったのか。
それはそれで、別に構わないのだが。
もしここに、俺の素性を知っている奴が居たらほぼ確実に今回の結果を予想していたはず……これで良かった、そう思っておこう。
◆ □ ◆ □ ◆
──広間を抜けた後は、魔物も出現することもなく、そのまま次の層へ。
「今回の階層は、また勝手が違うのでしょうか? 強大な魔物は居ないですね」
《ここでは、無双のような振る舞いが求められているようです。魔獣を何体も配備できないこともそうですが、先ほどとは違う強さを確認するためと思われます》
まあ、毎回毎回同じような戦い方ではつまらないからな。
縛りの方も踏まえて、今回は観客を楽しませながら突破するとしよう。