交霊実験 後篇
交霊実験 後篇
俺の愛機[アライバー]、そこに鹵獲していた魂魄が宿っていた。
少なくとも、搭載していないはずの自我が確認されている……調査必須である。
「──【神風兵】の魂自体は、きちんと流転しているんだよな?」
《はい。すでに解放され、こちらの技術では観測されておりません。ただし、炉核に魂魄が干渉を及ぼし擬似的に自我を生成、生前の技量を再現可能なようです》
つまり【大死導者】が操っていた魂魄──元【神風兵】自体はもう居ない。
そして、新たに魂魄の得たすべてを引き継いだ擬似魂魄が誕生した。
要するに、人生というデータすべてを丸々コピー&ペーストされた新しいデバイス。
生前の記憶はほぼほぼ引き継ぎ、かつ追加で戦闘経験を積むことで更に強くなれる。
「こう、何というか生前の記憶は失われているとかそういうデメリットは? それ、ほぼ転生だよな?」
《同一存在とは呼べない以上、生まれ変わったとは言えないでしょう。ですが、それでも旦那様は──》
「……転生だな。うん、そもそも生前の方が俺はよく知らないわけだし」
元より、【神風兵】の名前すら知らなかったわけだし……敵対関係だったものな。
名前を知る術は……ある、だってこちらの言葉を理解しているわけだし。
「名前を教えてくれるか?」
『────』
「……ん、ダメか?」
『──(コクリ)』
器用に首を縦に振り、否定を肯定する。
……どう呼べばいいのかさっぱりだが、まさか[アライバー]呼びなのか?
「『SEBAS』、頼めるか?」
《はい、すでに》
「……えっ、すでに?」
《旦那様、交霊をお願いします》
「えっ、あ、うん──“交霊”」
『──』
ほんの一瞬、意識が停止してしまう衝撃に圧されてしまう。
その流れのままに、【霊媒士】の能力である“交霊”を発動。
霊と交わす、ゆえに交霊。
精霊との契約も、ある意味同じ仕様だ。
魔力的繋がりを死霊や精霊など、精神体相手に行使することができるシステム補正。
本来繋がりを結べることなどできない適性の無さ、それでも『プログレス』の底上げと休人の万能適性で使用可能な状態にして、誤魔化して使用する。
「……えっと、これどうなるんだ?」
結びつきのようなもの……が、生まれたとは思えない。
だが[ログ]にはたしかに、成功したという旨が記述されている。
《旦那様、契約を強く意識してください。それにより認識が可能となるはずです》
「……うーん、今にも切れそうな蜘蛛の糸みたいな感じなんだが?」
《交霊の成功率とは別に、旦那様の適性や枠の拡張度、また契約対象の格や旦那様との差により回路の安定さに変化が生じます》
「まあつまり、俺の場合は契約自体はできたけど安定して使うことはできないと」
《今回の場合、契約することそのものが重要でしたので。一度繋いでしまえば、意図して絶たない限りはそのままです。あとは時間を掛け、馴染ませていくことで回路もまた安定していくことでしょう》
俺が切ることは無いし、おそらく向こうもそれをするだけの意志があるか怪しい。
言葉は交わしてくれないが、何となく契約の影響で何か感じるし……それでいいか。