闘技大会開発技部門 その32
闘技大会開発技部門 その32
姿を隠しての不意打ち攻撃を開始。
対する【魔導勇者】は先の尖った触手を展開していたのだが──突然、ふらついたと思えば額に手を当て何かに耐える仕草を取る。
『──情報処理能力。いかに万能の星杖とそれを補助するスキルがあれど、何事にも限界は存在します。普段であれば、それも補えるでしょうが……はてさて、この場においてそれは使えていますか?』
星杖を介した術式の行使は、【魔導勇者】自身が演算を行わなければならない。
術を重ねれば重ねるほど、加速度的にその負担も高まっていく。
今は戦闘用の術式に加え、星杖がこちらの手の内を暴くために解析も行っている。
相手は『騎士王』の術式である、そう簡単にはいかず一気に処理能力も下がったはず。
彼(女)が身に纏う装備のいくつかが、その負担を軽減するモノであることは判明している──が、開発技部門において、それらは十全な形で使用することができない。
《ですが、これでも状況を五分と五分に戻せたに過ぎません。解析を終え、処理能力が通常時レベルまで回復してしまえば、為すすべなく敗北となってしまうでしょう》
「……さて、そんな未来となる前にやってみますか──ただの拳!」
「はっ? …………げほっ!」
これまでに溜め込んだ死亡回数により、大幅に強化された“孤独蟲毒”の補正値。
それを活かし、【魔導勇者】の死角へ潜り込み拳による一撃を放つ。
当然それは柔剛一体の結界が阻まれるのだが、『闘匠』による防御無視が発動。
これまでのダメージから油断していた隙を突き、拳を体へと撃ち込んだ。
前回同様、たった一度切りのチャンス。
この一瞬のために様々な策を練り、動いてきた──逃すわけにはいかない。
「──『己が身を顧みず、楼閣の頂へ』!」
結界の配置位置を変更。
殴り飛ばした先に跳ねる結界が用意され、そこに乗った【魔導勇者】が衝撃と共に上へ弾かれる。
俺もまた結界を足場に上へ、殴り蹴り、押し込み──上へ上へと結界を登っていく。
対抗する隙を与えないためにも、ダメージで怯みを発生させ行動をキャンセルさせる。
低火力の術式は体に纏う結界がガード、それを上回る術式を使うためには時間不足。
──それでも途中から魔力で膜を張り、その内部で術式を準備し始めた。
ダメージを甘んじて受け入れ、代わりに怯もうとも術式の構築が止まらないようにしているようだ。
その準備が終われば、間違いなくこの攻めは終わることになる。
──頼むぞ『SEBAS』、勝敗はできるかどうかに掛かっているみたいだ!