闘技大会無制限部門前篇 その33
闘技大会無制限部門前篇 その33
マイの対戦相手である『陰陽師』、彼女の情報を改めて考察してみた。
触媒である符さえあれば、何でもできるのが根幹たる【陰陽師】である。
「──試合開始の時間だ」
舞台の上に並び立つ、二人の少女たち。
衣を重ねた装束に身を包む『陰陽師』、頭から足までモフモフな獣毛に包まれたマイ。
お互いに何やら言葉を交わしている。
その口元をこちらから把握することはできないが、どちらも笑顔を崩してはいないので揉めてはいないはず。
「…………ん、あれ?」
だが、途中からどこか様子がおかしくなっていく。
お互いに準備を始め、式神と従魔を一体ずつ配置するのだが……決定的だった。
「なあ『SEBAS』、アレって……」
《おそらく、お嬢様のご趣味と合わなかったのかと……》
「…………モフモフ、ではないからな」
多くの式神を従える『陰陽師』。
彼女がメインで従える式神は基本的に少女の姿を模しているのだが、その本質は異なっている者が多い。
加えて、数だけでいえば数百数千。
和島において最大戦力を保有する、皮肉にも独り百鬼夜行のようなこともできるのが彼女の権能。
──それがモフモフな式神かは別の話。
「そして、こうなったと……」
表面上、笑顔な二人。
しかしお互いの従魔の表情が曇るほど、それぞれ不穏なオーラを放っている。
それでも試合は始まり、それぞれを倒すべく従魔たちが動く。
マイはこれまで同様に聖天狼、『陰陽師』は和服の幼女──人形の式神、一火だ。
「二人とも、一体もとい一人と一体ずつしか出していないんだな……」
《相手の油断を誘う、次の試合への温存などもあるでしょうが、やはり一番の理由は一点集中の強化にあると思われます》
「考えてみれば、お互いそれができるのか」
マイは調教師系統の職業でありながら、空間系の『プログレス』を保有している。
それにより、複数の従魔を場に出さずともそれと同等の支援効果を発揮可能だ。
同じく『陰陽師』もまた、式神を理論上無限に従えることができる権能を持つ。
彼女の場合は少し勝手が違うが、まあ出す数が減ればその分力を注力できるだろう。
「『超越者:陰陽師』の式神、そして『裏天:孤天』の従魔……それだけでブーストは掛かっているだろうが、そのうえでお互いは動かずに様子見と……どうなるんだろうな」
マイも『陰陽師』も、決して戦えないわけでは無い。
なぜならどちらも、武器型の従魔と式神を使うことで高い戦闘能力が得られるからだ。
だがそれも、先に『SEBAS』が語った通り温存している。
それ自体は、どちらも把握している事柄だろうし……まずは、といったところか。