第一回職業解放前篇 その34
第一回職業解放前篇 その34
マイは聖天狼、『陰陽師』は人形の式神をそれぞれ出して試合開始。
互いに自らの支援で彼らを強化し、戦わせるところから戦いは始まる。
「って、いきなり状況が変わるな……アレはたしか、八倶だったか」
刀を持つ翡翠髪の少女。
突如として現れた彼女は、聖天狼の後ろ足に向けて斬撃を放つ。
だが聖天狼もそれに反応する。
まるで後方に視界があるかのように、突如として宙に跳ね──何も無い空を蹴り、二段ジャンプで攻撃を躱した。
「視界共有は定番だからな……」
《互いの信頼が無ければできない、高等技術ではありますが……お嬢様であれば、何ら問題などございません》
「そうそう、一部圧倒的実力で強引にやれる奴もいるにはいるが…………まあ、信頼も勝ち得ているよな、たぶん」
別に従魔は一体だけ、といったルールがあるわけでもない。
二対一の状況を放置するのは危ういと判断したマイもまた、従魔を一体呼び出す。
「えっと……土竜か?」
《『地潜土竜』、地面を自在に泳ぐことができることができる土竜ですね》
「いやまあ、モフモフではあるか。で、さっそく地面の中に潜伏したわけだが……マイ自身は聖天狼に乗って上に向かったな」
舞台は上空と地下、それぞれ床から一定距離で退場扱いになるルールだ。
土竜はその範疇で地面を潜り続け、マイの指示通りに何かをしていると思われる。
さて、いったい何をしているのか……何となくだが心当たりがあった。
だがそれが分かるのは、何も無ければしばらくしてからだろう……今は待つとしよう。
「『陰陽師』もそろそろ動くか……うん、符はやっぱり凄いな」
火炎、水流、雷電。
様々な事象が紙切れ数枚から引き出され、マイを襲う。
詠唱も膨大な魔力も必要ない、その場で少量の魔力を籠めるだけでそれは発動する。
……その分の仕込みには、かなりの手間が掛かるがな。
なお『陰陽師』の職業は【八卦符術師】、そんな符の扱いに長けたモノ。
方向性としては符の行使特化、それ以外の要素は権能で補っていると思われる。
ただでさえ、職業で使用に補正が入っているのに、権能で出力が増大するのだ。
結果、マイに降り注ぐ事象は災害レベルにまで昇華されていた。
「聖天狼もよく躱しているが…………上手くはいかないものだな」
一火、そして八倶。
二人は突如として宙に現れ、聖天狼同様に空を蹴って距離を詰める。
初動は『陰陽師』による入れ替えの符術。
空中での機動は純粋に彼女たちの技量によるもの──自在に天を駆け、聖天狼に襲い掛かっていく。