闘技大会無制限部門前篇 その43
闘技大会無制限部門前篇 その43
記憶の転写、『忌創展概』が辿り着いた不死性の在り方の一つ。
それにより、霊体たちは自らの経験を奪われ植え付けられる……そんなことがあった。
《解析完了、いつでも当てられます》
「……さて、どうしたものでしょう。まあ、やれるだけやってみますか」
「おや、これは……」
経験とはつまり、慣れである。
相手の行動を読み切り、最適な動きを取れるようになるわけだ。
だがそれは積み重ねによって得るモノであり、想定外の動きは含まれていない。
──『SEBAS』はそれを利用し、これまでまったく行っていなかった軌道を使う。
結果、霊体たちは一体として残ることなく浄化されていく。
だがこれで終わりでは無い、霊体たちはあくまでも呼び出されたものに過ぎない。
「──これもまた、検証終了。結論、いかに引き継ぐことができようと、脆弱であれば不死に非ず」
「……それだけ、ですか」
「それだけだとも。まあ、これはかなり昔に調べたものだからね。今であれば、もう少し異なる結果も出る……そう思っていたが、やはり君たちのようには、上手くいかないね」
休人は死んでも死なず、決して記憶を損なうことは無い。
ある意味究極の不死、ゆえに休人を調べようとする者も昔は多かった。
だが彼女がそれを暴けていないように、誰も完全に秘密を解き明かせてはいない。
またシステム的保護、アバターだから、ご都合主義だと休人は深くは考えなかった。
「ああ、でも一つ聞いた話があるね。何でも菌を使い、休人の死体を奪うことに成功した星敵が居たと」
「…………」
「休人たちの情報網は凄いね、星敵のことですら分かるんだから。不死とはまた違うことだけれど、君たちの体を調べるための方法としては悪くないんじゃないかな?」
休人の便利機能の一つ[掲示板]。
それを利用し、自分が件の星敵『霧疫』にやられたことを誰かが伝えたのだろう……それが巡り廻って、厄介な場所に到達した。
「君の討滅こそがオーダー。死んでも死なない君を討つためには、最低限肉体と精神を引き剥がす必要がある。そこでだ──『禁忌実証No.94:生者必滅』、実行開始さ」
「こ、れは……くっ」
何が起きたのか、先ほどとほんの少しだけ違っていた彼女の宣言。
検証では無く実証、それにより起きた──謎のデバフ。
「『状態異常:生者必滅』……」
《緊急代行──『星域』を展開、肉体の保護による緩和を実行します》
情報を求めるべく、[ステータス]欄から『状態異常:生者必滅』を確認する。
どうやら『SEBAS』が領域を構築して防がなければいけないほど、危険なようだ。
「……死亡時、一時アカウント凍結。実行者の死亡、あるいは任意による解除が行われるまでそのまま?」
「いろいろと制約はあるが、まあ君が読み上げた通りさ。君がこの試合で負ければ、自動的に僕は討滅者となる。闘技場の仕組み上、舞台から降りることも暫定的に死亡扱いとなる。つまり、逃げ場はもう無いわけさ」
何というか、圧倒的に俺が不利な条件というか……まあ、道理は通っているけどな。
理屈は簡単、それを通すだけの対価が支払われているから──生産世界、太っ腹だよ。