闘技大会無制限部門前篇 その47
闘技大会無制限部門前篇 その47
隠していた札の一つ、【魔導勇者】のオリジナル魔法の残滓を使った。
水と氷の力により、結界ごと『忌創展概』の身動きを封じることに成功する。
その間に何としても、[ミュチ・ユアル]討伐を済ませなければならない。
もちろん、俺一人でそんなRTA染みたことはできないが……『SEBAS』任せだ。
「──『セバスチャン』、任せたぞ」
《お任せください──認証確認、主導権を一時的に変更します》
後のことを任せると、俺の意識は眼前の光景をどこか遠いものとして映し出す。
それはまるで、テレビ越しに見るゲームのように……意識せずとも視界が動き出した。
『──“ 再生入器 □ ・ : 虚ろう現の幻 フェイタリアル ”』
俺、もとい『SEBAS』が動かすツクルのアバターがそう宣言する。
握り締めた勾玉に力が注がれ、一時的に新たな能力が追加された。
それは言霊を操る固有種のもの。
嘘と本当、虚偽と真実……そういったものに干渉することで、現実を捻じ曲げるチート過ぎる能力だ。
『──『死とは忘却、即ち対価はすべからく支払われるべし』』
一言それ、と呟きよりも長い方がコスパがいいと判明しているこの能力。
どういった内容だろうか、そんなことを熟考している間も戦いは続く。
『──“駆け上がれ、流星の如く”』
行使される擬・武神流のオリジナル武技。
詠唱も交えて発動するこれもまた、先ほどの“虚ろう現の幻”の影響下に含まれる。
「……うわぁ、ヒーローみたいだ」
思わず口に出してしまったが、そう言いたくなるような光景が広がっていた。
向こうとは連動していないようで、ただ何も無い場所に響く……まあ、それはいい。
流星と謡ったからか、俺の周りに展開される星のエフェクト。
それと共に、結界を蹴り上げ[ミュチ・ユアル]への攻撃を開始。
眼からのビームで応戦するも、それ以外の攻撃をしてこない[ミュチ・ユアル]。
理由はおそらく、する必要が無いのがこの個体だからだろう……死なば諸共だしな。
実際には光速で飛ぶ攻撃を、躱せる者がそう居ないからだろう。
超高速で演算を済ませ、放たれる前から対処できるスーパー執事AIは例外に入る。
「本数を増やしてはいるが、無駄だな……そして命中っと」
その手には、入れ替わる前から俺が取り出していた星の剣──[虚膨]。
魔力を籠めることでどこまでも大きくなるその剣を、最小限の大きさで一気に伸ばす。
俺にはできない精密な操作によって、堅くしなやかな動きで剣は蛇のように蠢く。
細やかに刻まれた[ミュチ・ユアル]は死に──そして、復活した。